Rupert Hineは名Producerとして、70年代後半から80年代にかけてより多くの人に知られるようになったMusicianである。個人的にはRupert Hineといえば、CaravanのJohn G. PerryやThe PeddlersのTrevor Moraisらと結成したQuantum Jumpに尽きるわけであるが、ProducerのみならずSongwriterや鍵盤奏者、Singerとしても極めて英国的なセンスに満ちた才能を発揮しているのである。ProducerとしてのRupertに関しては、70年代にリリースされたKevin AyersやItalyのNova、John G. Perry、Café Jacques、Anthony Phillipsのアルバムで、その手腕が発揮されており、いずれの作品も自分のお気に入りである。80年代にはJona LewieやThe Fixx、Howard Jonesといったあたりが個人的に好みのRupertらしいProduce作品だろうか。さて、元々Rupertは自ら曲を書き、歌い演奏するタイプのMusicianとして60年代にRupert & DavidなるFolk Duoを組んでPubやClubで活動していたという。当時、なんと渡英していたPaul Simonなどともステージを分け合うこともあったようだ。ソロとしてのキャリアは71年にPurple Recordsから、なんとDeep PurpleのRoger GloverによるProduceでリリースされた1stソロ・アルバム『Pick Up A Bone』から始まる。このAcousticでSinger Songwiter的な佇まいが魅力的な名作と81年リリースの3rdソロ・アルバムとなるSynth-Popの傑作『Immunity』のギャップには驚かされてしまう方も多いだろう。本作は、2ndソロ・アルバムで前作から引き続きSimon Jeffesがギターや作曲で参加し、Paul BuckmasterからMartyn Fordに変わったもののOrchestrationもまじえつつ、Rupaertの弾き語りがベースになっている点で延長線上にあたるアルバムとなっている。しかし本作も『Immunity』も、両者が持っているInnovativeで英国の香りが漂うStranegeなPop感覚は1stアルバムからずっと共通したものなのである。映画製作者のAnthony Sternの『Wheel』という作品に使用されたというこのアルバムの風変わりな楽曲群、一筋縄ではいかない英国独特の捻じれたセンスが映像を喚起し、奇妙なTrip感覚を味あわせてくれるのが素晴らしい。ドラムスにMicky Waller、Michael Giles(Mike Giles)、PercussionにRay Cooper、そしてベースにJohn G. Perry、というリズム隊が嬉しい。またSimon JeffesのみならずPenguin Cafe人脈のSteve Nayeがエレピを弾いているのが渋い。
『Unfinished Picture』はRupert Hineが73年にリリースしたアルバム。
アルバム1曲目“Oranege Song”はSimon Jeffsとの共作。Classicalな幕開けに子供の声、そしてRupertのAcoustic Guitarの弾き語りにJohn MumfordのTromboneやDave CassのTrumpetなども加わったNostalgicなJazz風味が良い。正調英国伝統のStrange Popsに仕上がっている。
“Doubtfully Grey”もRupertのAcoustic Guitarの弾き語りにSimon Jeffesのアコギやベースが加わる英国。後半、不穏なThe Martyn Ford EnsembleのStringsがいかにも。
“Don't Be Alarmed”もRupartのアコギ弾き語りにベースとドラムスのリズム隊がRock的なDynamismを添えた捻りのきいたBritish Pop。縦横無尽に駆け巡るSimon Jeffesのエレキ・ギターもイイ味を出している。
“Where In My Life”は一転してSynthesizerの多重録音をバックに温かみのあるVocalを聴かせる。ArpのぶっといAnalog Synthesizerらしい音色が最高。
“Anvils In Five”はGilbert Biberianの指揮、Simon JeffesのOrchestrarionによるThe Martyn Ford Anvil Orchestra & Quartetの命名されたStringsの調べが正に映画音楽といった感じで迫ってくる。Church Organを弾きながら呟くように歌うRupertのVocalと共に怪しさ満点である。
ピアノ弾き語りの“Friends And Lovers”。ClassicalなピアノにRupertのGentleな歌声が良い。
“Move Along”はRupert節炸裂の風変わりな魅力を持ったSwampな香りも漂うBritish Popの名曲。Rupertの演奏するエレピも良いがHarmonicaがイイ味を出している。
再びSimon Jeffesとの共作となる“Concorde(e) Pastich(e)”。TheatricalなRupertのVocalで始まり、途中でいきなり幻惑的なインストに変わる、これまた変な夢を見ているような摩訶不思議な魅力を持ったナンバー。Steve NyeのエレピにJohn PunterのドラムスをバックにSimon Jeffesのギターが大活躍。
アルバム最後を飾るのはRupertのピアノ弾き語りで始まり、エレピやOrgnなど様々な鍵盤を弾きながら儚くMagicalな旋律を紡ぎ出す“On The Waterline”。物憂げなVocalとSpinnetの音色が素晴らしい。Mike Gilesのドラムスも地味ながらさすがのスティックさばき。
(Hit-C Fiore)