Piltzはキノコのレーベル・マークで知られるドイツのレーベル。Berlinに設立されドイツ独特のRockやElectronic MusicやさまざまなExperimentalな音楽を生んだレーベルOhrと共に仕掛け人Rolf-Ulrich Kaiserが手掛けたこのレーベルからは、やはりこの時代のドイツらしい興味深い音盤が何枚かリリースされている。本日ご紹介するEmtidiの2作目となるアルバム『Saat』 は、印象的なジャケットも相まってこのレーベルからリリースされた少々謎めいたアルバムの中でも個人的には屈指の一枚と思っている。残念ながら自分は再発盤でしかもっていないが、Helmut Frizが描いたCover Artは、内ジャケットも含めて、その美しさもあってオリジナル盤が非常に人気の高いレア盤になっているそうだ。Canada生まれDolly Holmesという女性がドイツ生まれのMaik HirschfeldtとLondonで出会ったことからEmtidiの歴史は始まる。共にAcoustic Guitarを演奏し歌う二人のHippieは意気投合してもう一人のTimというメンバーと共にBob DylanやDonovanなどのContemporary Folkの影響を受けたEmtidiを結成。いつしかTimというメンバーは脱退してしまったのか、Traditional Folkの影響を受けてBouzoukiやKazooも演奏するDollyと、Fluteや12弦ギターも演奏するMaikのFolk DuoとしてThorofonから70年にデビュー・アルバム『Emtidi』をリリース。本作はそれに続くアルバムである。朴訥として地味な味わいが個人的には気に入っているデビュー作に比較すると、Markがギター、ベースやFluteに加えてVibraphoneやSynthesizerも演奏し、DollyもOrganやエレピ、Mellotronを演奏し、Traditional Folkがベースとなるものの、よりDreamyで幻想的な味わいが加わったPiltzらしい作品となっている。中でも、VibraphoneやLeslieを通したギターやFlute、12弦Acoutic Guitarがイイ味を出している。
『Saat』はEmtidiが72年にPiltzからリリースしたアルバム。
アルバム1曲目“Walking In The Park”は神秘的なOrganで始まりLyricalなアコギと儚げな女性Vocalがいかにもなナンバー。途中で男性Vocalが加わりアコギのソロ、そしてエレピが入るとベースも加わりUp Tempoに展開していく。ここからはギター・ソロが始まりPsychedelic Jam風の演奏が続く。
穏やかな風景を描き出すOrganとSynthesizerのイントロで始まる“Träume”は典雅な女性Scatが絶品である。Vibraphoneの響きも良い。
これまた幻想的なSynthesizerによって幕を開ける“Touch The Sun”は11分を越える大曲。男女のVocalが歌い上げるバックにはMellotronが流れている。この曲も幽玄な中にClassicalでTraditionalな要素が絡み合いながらドイツ独特の浪漫風味を醸し出している。後半のSpacyなSynthesizer、そして鳥の鳴き声で終わるところが興味深い。
Traditional Folkの香りが濃厚な“Love Time Rain”。
アルバム・タイトル曲“Saat”はAcoustic GuitarとDollyのScatが夢見心地なナンバー。12弦Acoustic Guitarの響きが良い。
最後をシメるのはSyhthesizerで始まる“Die Reise”。ジャンジャカかき鳴らされるアコギをバックにドイツ語で、怒鳴りつけるような男性Vocalが突如登場。エレピや女性Scatが加わるが、これまでの雰囲気をぶち壊すかのような場違い感が面白い。後半はOrganにのってSynthesizerがウネウネとリードをとり、OrganとFluteのかけ合いやら、エレピ・ソロにアコギがジャンジャカと、わけわかめ酒な最後の最後に来てドイツ特有のヤサグレ感が前面に出た、何がやりたいのかわからない的なエンディングも微笑ましい。
(Hit-C Fiore)