Thin LizzyはHard-Boiledで男くさいPhil LynottのVocal、Brian RobertsonとScott Gorhamのツイン・ギター、そして 大好きなDrummer Brian DowneyのVariationに富んだ引き締まったドラミングが魅力である。しかし、初期のギタリストEric Bell時代のアルバムも結構いけるのである。Trio編成だったこの時代のLizzyはBlues、Irish Folk、Funk、British Traditional、Rockabillyといった、さまざまな音楽性が同居したRock、ある意味でPub Rock的とも言える雑食性で洗練されていない荒々しさが魅力でもある。そして何より彼らのIdentityであるIrish魂がより感じられる作品となっている。ゴツゴツとした肌触りの荒削りでまだまだ試行錯誤を繰り返している中途半端さや煮え切らなさは確かに感じられるものの、この時代のLizzyにしか表現できなかったサウンドは個人的に気に入っている。やはりTrioで音の薄さや構成力といった部分は全盛期に遥かに及ばないものの、それ故にDowneyの多彩な表現力に富んだドラミングが目立ち、PhilのVocalも牧歌的な部分や抒情性や泣きが、この時期ならではの瑞々しさや生々しさで迫ってくる。よりHardに、American Rock的な豪快さも取り入れたより男気あふれるサウンドに変容していくRobertosonとGorhamのツイン・ギター時代とは一味違った魅力が気に入っている。中でも名曲“Sarah”ではPhilのSongwriterとしての才能に驚かされる。豪快で男らしいだけではない、Lizzyの持つもうひとつの魅力に浸りたい時は本作をターン・テーブルにのせるのである。
『Shades of a Blue Orphanage』はThin Lizzyが72年にリリースしたアルバム。
アルバム1発目はBrian Downeyのドラム・ソロで始まる“Rise And Dear Demise Of The Funky Nomadic Tribes”。BluesyなギターのRiffが飛び出し、続いてFunkyなRiffがかき鳴らされる。FunkyなThin Lizzyが結構いかしている。最後に再びFeatureされるBrian Downeyのドラム・ソロもカッコイイ。
“Buffalo Gal”はRhythmに変化を持たせ、意外に牧歌的なメロディを歌うPhilのVocalが面白い。
Rockabilly風の“I Don't Want To Forget How To Jive”。
牧歌的で美しいメロディを持ったBallad“Sarah”は初期Thin Lizzyの隠れた名曲。Mellow CandleのClodagh Simondsが弾く典雅なピアノと囁くようなPhilのVocalが絶品の別Versionも必聴。
“Brought Down”はEric Bellの多重録音によるギター・ソロが唸るFolkyな味わいもあるBlues Rock。
“Baby Face”はPhilの男気満点のVocalが炸裂するHard Rock。こういう硬派な魅力は70年代中期以降のLizzyに顕著に出てくる。
民謡調の旋律を奏でるアコギをバックにShoutするPhilのVocalがイイ感じの“Chatting Today”。この辺はPub Rockな雰囲気も漂う。
アルバムで一番お気に入りの“Call The Police”。ギターのカッコイイRiffにDowneyの引き締まったドラミング、PhilのHard-BoiledなVocal。ゾクゾクするような歌と演奏が最高である。
最後を飾るのはタイトル曲“Shades of a Blue Orphanage”。語り部Philの真骨頂発揮。PastralなイントロからPhilの魂入ったVocalが、あえて淡々と、しかし説得力を持って物語を歌い上げていくのが圧巻だ。Harmonicaもイイ味出している。
こちらは同名異曲の『Black Rose』の“Sarah”。こちらも名曲。
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◎Sarah/Thin Lizzy
(Hit-C Fiore)