Bebop時代の伝説のTrumpet奏者Howard McGhee。これは何度目の復帰作であろうか。Bethlehemで55年に録音された『The Return Of Howard McGhee』 、西海岸で再起をかけたContemporaryからの61年作『Maggie's Back In Town!!』、そして本作は70年代後半の録音だ。Howard McGheeはDizzy GillespieやFats Navarro、Idrees Suliemanらと並ぶBebop創成期のTrumpetの名手として知られてはいるが、職人肌というか、渋好みのMusicianではある。Michigan州Detroit生まれのMcGheeはLionel HamptonやAndy Kirk、 Count Basie、Charlie Barnetらの楽団で演奏してきた猛者。元々はRoy Eldridgeに影響を受けたSwing Styleが得意だったMcGheeだが、Dizzy Gillespieに啓発されたのか、46年以降は徐々に切れ味鋭い無手勝流のBop Styleへと変貌を遂げていく。この時期のMcGheeのプレイは、DialでのCharlie Parkerとの共演にみられるような、自由奔放でAggressiveな怖いもの知らずである。時にParkerにすらガチの喧嘩を挑むような暴れん坊なMcGheeのTrumpetに心を撃ち抜かれてしまう。これぞBopの醍醐味、スリリングで野生の動物のような荒々しく俺様最高のMcGheeが最も輝いていた時期であったのだろう。50年代以降のMcGheeのプレイは、おクスリ関係のせいか精彩に欠け、閃きや鋭さはすっかり消えてしまったかのようだ。しかし、火を噴くようなHigh Notesでの攻撃的なフレージングから安定した中音域の豊かな音色を生かした玄人好みの円熟のプレイへの変化は、40年代のスリリングなMcGheeと比較すれば物足りないかもしれないが、それなりに楽しめるものではある。やはり、この人は上手い。そして音楽教師で生計を立てCharlie Rouseらに教えただけある人である。中々聴かせどころをわかっている燻し銀のプレイは、本作でも健在だ。
『Jazzbrothers』はHoward McGheeが78年にJazzcraftからリリースしたアルバム。ピアノにBop魂溢れるBarry Harris、ドラムスは大好きなGrady Tate、ベースには名手Lisle Atkinson、そしてTenorには教え子Charlie Rouse、PercussionにはJual Curtisというメンツ。
アルバム1発目は力感に満ちたFunkyなRhythm Sectionで始まる“In There”。Jual CurtisのPercussionが心地良く鳴り響く中、心ウキウキ、気分爽快なThemeに続いてMcGheeのTrumpetソロがイイ感じ。Charlie RouseのTemorソロ、Barry Harrisのピアノ・ソロも快調である。
HarrisのElegantなピアノで始まる“One For George”はMcGheeのMuteされたTrumpetの弱々しいさと不安定さが少々気にはなるが、雰囲気はバッチリである。
“Island Mood”はExoticなLatinの香りを放つ抒情味がイイ感じ。Afro-CubanなTateのドラミングと渋エロなRouseのTenorがイイ味を出している。
キレの良い“Frisky”もCalypso調のRhythmが気持ち良く躍動する。Harrisのピアノ・ソロ、続くMcGheeのTrumpetソロもご機嫌。そしてRouseのTenorもキレが良い。
Laid Backした“Driftin'”はTrumpetとTenorによるThemeがイイ感じ。こういう曲のHarrisのピアノ・ソロは最高だ。歌いまくり、沁みますなぁ。Tateにしてもソロを聴かせるAtkinsonにしても、勿論McGheeにしてもRelaxした中に各人の円熟の技が冴えまくっている。
疾走感に満ちた指パッチンのSwinger“Queen's”。Tateのドラミングがセンス抜群。
アルバム最後を飾るのはチョイ後期Monkを思わせる“Search”。味のあるHarrisのピアノ・ソロが小粋に跳ねる。
(Hit-C Fiore)