ドイツのBad Brückenau生まれのHerbert F. BairyことFerdinand FörschはExperimentalな独特の手法を持ったPercussion奏者としても知られているが、彼のCompositionも中々の才能を感じさせてくれる。『4Cage』などElectronicでAbstractな作品などを聴いても、どこかにClassicalでMagicalな響きを感じ取ることができる。それは、2010年代の現在に至るまで、少しづつ好きモノの間で興味と関心を集めて、いよいよそれなりの評価と愛好者を獲得することに成功したPost Classicalな音楽家たちと共鳴する作品となっている。Jazzや民族音楽、電子音楽やさまざまな伝統音楽やClassicalな音楽が入り混じり、独特の音像を描き出していくHerbert F. Bairy名義で70年代末にリリースされた本作『Traumspiel』では、ClarinetとFlute、Soprano Saxに名手Bernd Konrad、TrumpetにFrederic RaboldとRudi Reindl、ドラムスにFrederic Rabold CrewのManfred Knielm、ベースにGerman Jazz界の実力派Thomas Stabenow、Synthesizer奏者のJürgen Bräuningerといった豪華な演奏陣を迎えて、Cello奏者やTabla奏者をまじえて、女性VoiceにはEnsemble BelcantoのDietburg SpohrやJeanette Mc Leodらを起用、Herbert F. Bairy自身はPercussionとDrumsにPiano、Harmonium、Zither、Windharpを演奏してExperimentalで幻想的な一大絵巻を作り上げている。またOdinというバンドからギターにRob TerstallとSynthesizerとベース、ドラムスを演奏するJeff Beerが迎えられているのが興味深い。Experimentalな中に、Exoticな香りと、Acoustic楽器が生み出す生命感に満ちた響きとOperaのように歌う女性Voiceが生み出す幻想的な音響に知らず知らずのうちに惹きこまてしまう。
『Traumspiel』はHerbert F. Bairyが1979にリリースしたアルバム。
アルバム1曲目は13分越えの大曲となるアルバム・タイトル曲“Traumspiel”。Abstracで不穏なSynthesizerが風や女性の悲鳴のようなようなScatとともに幕が開く。Operaのように歌う女性Scatはバックの音響と共に、聴く者を、ゆるやかに、Darkで神秘的な世界へと誘い出す。すると、PercussionとCelloがPastralな響きを奏でだしその上を複数の女性Scatが心地良く重なりあう。DilrubaやTamburaがEthnicな香りを醸し出し、女性Scatが夢幻の世界へと誘うように共鳴する。ここは一体どこなんだ?という感じで暫く心地良い世界に浸りきっていると、ピアノが刻まれ、やがてOdinというバンドのギタリストRob Terstallの歪ませたギターが虚空を彷徨う。ドラムスが加わるとバンドっぽくなった演奏の上を女性Scatが浮遊していく。Ulrich Süßeが弾くChurch Organが効果的だ。
スリリングなイントロで始まり、Dizzy PandtliのTablaが響く中、Thomas Stabenowのベースが低音で心地良くウネるJazz Rock“Runnin'”。縦横無尽に躍動するManfred KnielmのドラムスにのってギターとHorn隊が高いTensionで激しく交錯する。Frederic RaboldのPocket-Hornが鋭く切り込みまくりなのがカッコイイ。
B面は14分越えの大曲“Lady Ollala”で始まる。無機質な電子音で始まり、ギターや女性Voiceが祈りのような旋律を導き出す。無機質な電子音が鳴り響く中、Exoticな民族音楽風の旋律がSynthesizerやClarinetで奏でられる。アコギが心地良い風を運び、ClarinetのMinimalなフレーズが続く中、ギターが唸りを上げ、混沌とした終わりを告げる。
最後を飾るのは“Redpeter's Dream”。これまたExperimentalな音響の中から浮かび上がるMinimalなPercussionがMagicalな世界を生み出している。
(Hit-C Fiore)