Chic Coreaのアルバムは未だに『Now He Sings, Now He Sobs』と『Piano Improvisations Vol. 1』、『Piano Improvisations Vol. 2』の3枚が最もお気に入りである。70年代のChickのアルバムは好きなものもあるし、自分の好みと合わないものもある。Return to Forever(以下RTF)の作品は、やはり初期の数枚までは聴いていたけれど、70年代中盤からの作品は自分には縁遠いものとなってしまった。しかし、同時期のChickのソロ・アルバムはわりと聴いていたような気がする。ジャケットにChick自身が何かになりきった姿がドーンと出ている70年代のコスプレ4部作:76年の『The Leprechaun』、『My Spanish Heart』、78年の『The Mad Hatter』、『Secret Agent』。この4枚はよく聴いていた。一方、RTFはFender Rhodesが印象的であった72年のデビュー・アルバムから76年にリリースされた『Romantic Warrior』ではChickが弾くArp OdysseyやMoogを全面的にFeatureされていた。同年にリリースされた本作でもSynthesizerやOrganを操るChickが印象的だ。ベースに70年代のThe Bill Evans TrioのEddie Gomez、そして何よりも大好きなAnthony Jacksonを迎えているのも良い。ドラムスは当時超売れっ子となっていたSteve Gaddである。RTFの活動と並行して次々とConceptualなソロ作をリリースしたChickの意図はともかく、本作でのChickはSynthesizerのみならず弦楽四重奏や女性Vocal、Horn Sectionを導入して幻想的でRomanticな世界を生み出した。ジャケットは思わず引いてしまいそうではあるが、あのFreeで尖りまくっていた時代を知っているだけに、この時期のChickには、そういった側面があったのを知るのは面白かった。もしかしたらPartnerとなるGayle Moranとの出会いが関係したのかもと思ってみたり。
『The Leprechaun』はChick Coreaが76年にリリースしたアルバム。
アルバム1曲目はExoticなSynthesizerのフレーズで始まる“Imp's Welcome”。Percussionをバックに繰り出されるSynthesizerがタイトル通り、この幻想的なアルバムの幕開けだ。
“Lenore”はSteve Gaddの切れ味鋭いドラムが躍動しChickのAcoustic Pianoの清々しい調べとSyhnthe Bassがイイ感じ。目くるめくSynthesizerと後半にちょっとだけ登場するGayle Moranの幻想的なScatも効果的。
“Reverie”もChickのアコピにGayle MoranのMysteruousなScatがFeatureされる。
続く“Looking at the World”ではGayle MoranがVocalをとる歌モノ。イントロのスリリングな弦楽四重奏は良いが途中の大仰なキメやChickにしてはありふれた旋律やピアノ・ソロは個人的には少々キツいものがある。
盟友Joe Farrellが参加している“Nite Sprite”はSteve Gaddのドラムが炸裂し、ChickらしいスリリングなキメにのってSyhnthesizerソロやAnthony Jacksonのベースも暴れまくり。FarrellのSaxソロがもっと聴きたかった。
弦楽四重奏で始まりGayle Moranが切々と歌い上げる“Soft and Gentle”。Eddie Gomezのベース・ソロもイイ感じ。
可愛らしい小曲“Pixiland Rag”を挟んで“Leprechaun's Dream組曲”が始まる。
“ Leprechaun's Dream Part 1”はGayle Moranの可憐なScatとJoe FarrellのFlute、Chickのエレピが弦楽四重奏にのって幻想的な世界を描き出す。Chickのエレピ・ソロが最高。
“Leprechaun's Dream Part 2”はBill WatrousのTromboneソロが素晴らしい。変幻自在のリズム隊にのってHorn Section、多重女性Scat、弦楽四重奏が絡み、最後はチョイと大仰ながらも盛り上がりながら大団円で幕を閉じる。
(Hit-C Fiore)