お気に入りの フランス人ドラマーJacques ThollotはJef Gilson Big Bandに在籍し、Michel Portal、Joachim KühnやDon Cherry、Steve Lacyのグループでも活躍したことで一躍フランスのJazz界で、その名を高めた人物。面白いことに自身のリーダー作となると単なるJazz Drummerとしての役割を果たすだけではなくPianoやOrgan、Synthesizer、Percussionも演奏し、Electronicsや多重録音、Collage、効果音、Effectを巧みに使った唯一無二の世界を作り上げている。それはExperimentalかつFreeで、Jazzのみならず現代音楽の香りも漂う、当時としてはかなり意識的に音響効果を考えた孤高の作品ともいえる意欲作。となった。以前ご紹介した71年にリリースされた1stリーダー・アルバム『Quand Le Son Devient Aigu, Jeter La Girafe À La Mer』も素晴らしい出来であったが、French Jazz界の革新者Jef Gilsonが設立したPalmからリリースされ、Gilson自らProduceを手掛けた本作も最高だ。何より、フランスが誇るMulti管楽器奏者であり有能なComposer/Arrangerとしても知られるFrançois Jeanneauが参加しているのだ。しかも、ThollotとともにSynthesizerまで弾きながら、本作で双頭リーダー作ともいえそうな貢献度の高さで存在感を発揮している。さらに嬉しいことに、数曲ではあるが、これまた大好きな天才ベース奏者Jean-François Jenny-Clarkが参加しているのである。前作同様、Avant-GardeでExperimentalな路線であるが、 JeanneauのPrimitiveでWildな一面が強調されたTenor SaxとMysteriousで知的な香り漂うFluteが聴けるのが嬉しい。電子音が飛び交い、Free Improvisationが散りばめられたアルバム。さまざまな小曲が気ままに並べられ、まるでThollotの精神世界を覗き込むように、その小宇宙に聴き手はいつしか惹きこまれていく。ModeやFreeを経て停滞と混迷ともいえる試練の時代が続き、Jazzが迷走していたとさえ言われる70年代にフランスから生まれた異形のJazzなのだろうか。Palmから同年にリリースされたFrançois Jeanneauの初リーダー作『Une Bien Curieuse Planète / Such A Weird Planet』と対になる傑作アルバムである。
『Watch Devil Go』はJacques Thollotが75年にリリースした2ndリーダー・アルバム。
アルバムは “Kanephoros”でSpacyなSynthesizerがThemeを奏でて摩訶不思議ワールドの幕開きとなる。
“Up-Down”はFrançois JeanneauのElegantかつLyricalなFluteと可憐なピアノがこの上なく美しく儚い旋律を紡ぎ出していく。
“Watch Devil Go”もJeanneauのFluteとSynthesizerをバックに女性SingerのCharline Scottが気怠げなVocalで実にイイ感じ。
Jeanneauが野性味あふれる逞しい音色のTenor SaxでFreeにBlowしまくる“In Extenso” 。Thollotのドラミングは変幻自在にJeanneauに対応し、二人のガチバトル状態となる。
“Go Mind” はFluteの多重録音とJean-François Jenny-ClarkのAcoustic Bassによる幻想的なナンバー。静謐で深遠なる美しさがこの世のものとは思えない、この時代のフランスでしか生まれ得ないJazz。
“Tryptique Pour La Foire Des Ténèbres De Ray Bradburry” は3部構成の組曲。ここでもJeanneauのFluteが大活躍。Fluteの多重録音に不穏な電子音が鳴り響く。
“Le Ciel Manque De Généalogie” は再びFluteの多重録音とJean-François Jenny-ClarkのAcoustic Bassによる演奏だがすぐ終わってしまう。
不穏な電子音が乱れ飛ぶ“Kamikaze's Nightmare” 。
“Entre Java Et Lombok” はStringsが電子音と共に奇妙な世界を生み出している。室内楽的ではあるが、このStrangeな感覚はたまらなく魅力的だ。
“Eddy G, Always Present” もSynthesizerが鳴り響きClassicalでRomanticな旋律を奏でる。
“Before In” はTenor Saxとドラムスの短いバトル。
“Eleven” はおそらくThollotとJeanneauが弾くSynthesizerが二重奏を奏でる。
“La Dynastie Des Wittelsbach” はJeanneauとThollotがまたまたガチバトル。途中でWaltzのRhythmをThollotが刻んだりしている。Jeanneauのこういう荒々しいプレイが聴けるのは嬉しい。
“1883-1945, Heavens” はThollotがFluteとJean-François Jenny-ClarkのAcoustic Bassによる幻想的な、そしてあっという間に終わってしまう演奏。
“Au Stylo Feutre, Un Paysage” はThollotの弾くピアノとJean-François Jenny-ClarkのAcoustic Bassが摩訶不思議な世界を浮遊しているようなナンバー。
最後を飾るのはThollotのドラムスをバックに多重録音でFrançois JeanneauがSaxとFluteを演奏してアルバム1曲目の旋律を奏でる“Canéphore” 。巡り巡る世界は終わらない。
(Hit-C Fiore)
