Profiles/Mason + Fenn | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 10ccの来日公演を初めて観た時に感じたのは、あたらめて高い演奏技術を持ったバンドだと再認識したこと。勿論レコードを聴いて歌も演奏も英国の並みのグループよりは優れているのは知っていたが、てっきり彼らはStudio録音偏重タイプのバンドだと思い込んでいたから、Liveでも忠実にStudioの音を再現する、余りにも完璧なChorusや歌と演奏に驚かされた。オリジナル・メンバー分裂以降のメンバーが増えた新生10ccはLive Bandと言ってもいい位に充実したLive演奏を聴かせてくれている。それはGrahamとEricが袂を分かちあい、Grahamが引き継いでいる10ccでも同様だ。そして分裂後の彼らのステージでも存在感を発揮してきたRick Fennというギタリストの才能はもっと評価されてもいいのではないかと思うのだ。前置きが長くなったが本作はPink FloydのDrummerであるNick MasonがFennと80年代半ばDuo名義でリリースした作品。Masonが81年にリリースしたソロ作『Nick Mason's Fictitious Sports』は全曲Carla Bleyが楽曲を書き1曲を除きRobert WyattがVocalを担当、TrumpetにMike MantlerSteve SwallowのベースにChris Speddingのギターというその筋にはこたえられないアルバムであった。本作は1曲を除きインスト・ナンバーで構成されている。リリースされた時代を考えればドラム・サウンドやDigital鍵盤がいかにもな80年代サウンド であり、当時全盛のElectronicsを多用しつつも安易なNew AgeモノやSynth Popとは一線を画す作品に仕上がっている。Mike OldfieldのTourやRecordingに参加したりNick Masonがドラムスを叩いているMichael Mantlerの87年作『Live』で素晴らしいギターを披露するなど玄人筋に評価の高いFennの才能が本作にも発揮されている。鍵盤やベースも演奏するMulti-InstrumentalistであるFennはセンスの人だ。楽曲もフレーズもセンス抜群なのだ。今や古くさい時代の産物となったDigital KeyboardsElectronic Drumsを使って、今でもこれだけを聴かせてしまう作品に仕上げるは只者ではない。

 『Profiles』はMason + Fenn85年にリリースしたアルバム。Nickはドラムスと鍵盤を担当。Rickはギター、ベース、鍵盤を担当している。
アルバム1発目の“Malta”からいきなりDgital Synthesizer全開。Aja Fennが鍵盤を担当しCraig PruessEmulatorによるBrassが華を添えるインスト・ナンバー。鍵盤は時代を感じさせるがFennのギターが素晴らしい。
軽快なRhythmで始まる“Lie For A Lie”はDavid GilmourMaggie ReillyがVocalを担当しHeavy Metal Kids~UFOのDanny Peyronelが作者の一人としてクレジットされているのが嬉しい。Exotic風味のPopなナンバーだが、バックのSynthesizerがいかにも80年代。MaggieはFennが参加したMike Oldfieldの『Five Miles Out』、『Crises』でVocalを務め後者収録曲“Moonlight Shadow”。の名唱で知られる。
Fennのギターがこの上なく美しい音色でSynthesizerをバックに歌いまくるインスト“Rhoda”。Mel CollinsがSaxを吹いている。
アルバム・タイトルの“Profiles”が組曲型式で2つのPartで披露される。まずはElectric Shuffleな“Profiles (Part1)”とMinimalなフレーズを刻むElectronicsが心地良い“Profiles (Part2)”。途中でRhythmが変わるところは10ccぽい。
Israel”は悪しき80sElectronic Pop風。David Bowieみたいに歌うDanny Peyronelが微笑ましい。
And The Address”はMel CollinsTenor Saxソロが今度はイイ感じでFennのギター・ソロもカッコイイ。バックのDigitalなサウンドは意外に新鮮に聴こえるから不思議だ。
Slap Bassキレの良いギターが心地良いFunk TuneMumbo Jumbo”。ここでのMel CollinsTenor Saxソロもカッコイイ。勿論Rickのギター・ソロも絶品で時代遅れのDigital Synthesizerの音もカッコ良く聴こえるのが面白い。
これまたモロ80sなDigital Synthesizerとドラムサウンドの“Zip Code”。コレも今聴くと結構面白いんですな。FennのAggressiveなギター・ソロも楽しめる。Fennが弾いているSlap Bassもカッコイイし鍵盤のフレーズのセンスが素晴らしい
ダサダサの80sなBeatにのったインスト“Black Ice”。Fennのギター・ソロSyntheソロMel CollinsTenor Saxソロも派手に暴れて、思いのほか気持ち良いんですわ、これまた。
流麗なギター・ソロ80年代ど真ん中のサウンドにのって披露される“At The End Of The Day”。普通ならダッサダサになるのにフレーズのセンスが良いから、むしろ心地良く聴けてしまう。
最後をシメるのはタイトル曲の文字通りPrt3となる“Profiles (Part3)”。ここでもFennのギターは素晴らしい。やっぱり、この人はセンス抜群ですわ。
Lie For A Lie/Mason + Fenn

(Hit-C Fiore)