
Klaus SchulzeがProduceを手掛けた作品ということで思わず手が出た音盤である。例によって摩訶不思議なジャケットの醸し出すSF的な雰囲気も自分好み。ドイツのSynthesizer奏者であり、同国で初めてModuleをそれぞれ組み合わせて音作りをするRoland System 100Mなどの Analog Modular Synthesizerの解説本を書いた人物としても知られているWolfgang Bock。BerlinでElectronicsを学んだ、その筋のプロではあるが、本作では、ありがちなElectronic一辺倒で押し通す凡百の味気ないSynthesizer Musicとは大きく異なる音楽が聴ける。それは、米国生まれのBrad HowellやJazz Rock Band Nanu UrwerkのドラマーHerk Hobbが叩く生のドラムスを導入しているからだけではなく、Analog SynthesizerやMellotron Choirsの使い方まで、Cool過ぎない人間的なものを感じさせてくれるからだ。それはElectronicsと生楽器の考え抜かれた組み合わせの妙や、適度にMelodiousな旋律を織り交ぜSequencerを生き物のように操るWolfgang Bockの個性となって、幻想的で浮遊感漂うEnergeticなSoundscapeを形成している。Klaus Schulzeの『Blackdance』や『Picture Music』、『Timewind』のジャケットを書いたSwissの画家Urs Amannによるジャケットから漂う雰囲気とは少々違った人間的なものを感じてしまうのだ。80年という微妙な時期にリリースされた作品ではあるが、ある種時代錯誤な、遅れてきたGerman Electronics Musicゆえに今の時代でも妙に楽しめる作品として異彩を放っている。
『Cycles』はWolfgang Bockが80年にTelefunkenからリリースしたアルバム。Klaus SchulzeがProduceしている。70年代後半のKlaus Schulzeのアルバムや『Correlations』などAshraの諸作同様Panne-Paulsen Studiosで録音されている。
A面すべてを使ったタイトル曲“Cycles”は18分越えの大曲。SpacyでSymphonicなSynthesizerでアルバムは幕を開ける。この重厚なAnalog Synthesizerならではの音の迷宮の中に一度入り込んでしまうと、時間も空間も消滅してしまう。Tangerine Dreamの幽玄な世界とはまた違った壮大なスケールであるが、Darkな世界に落ち込むことなく未知の世界への探求が始まるようなCosmicでPostitiveな響きすら感じてしまう。イントロから始まりSequencerが登場するまでの最初の6分間、ワクワクしながら今か今かと待ち続けて「さあ、宇宙の彼方まで飛んでいくぞ」みたいな感じで思わず童心に帰ってしまうのだ。そして徐々にSequencerが加わりながら神々しいMellotron ChoirsやHerk Hobbが叩くドラムスが登場していくあたりが素晴らしい。ドンドン気分が高揚していくストーリー性を持った音楽である。
B面1曲目は“Robsai Part 1”は派手に鳴り響くChurch Organで始まる。すると高速のSequenserが目まぐるしく天空を駈けぬけ、荘厳なMellotron Choirsが現れる。
“Robsai Part 2”はBrad Howellの叩くドラムスがドコドコとPrimitiveな雰囲気とAnalog Synthesizerの組み合わせが、この時代らしいイナタさを感じさせてイイ感じ。
“Changes”もウニュウニョSequencerとHerk Hobbが叩くドラムスが絡むところが面白い。
最後をシメるのは“Stop The World”。 キラキラ宇宙に煌く星々のようなSequencerや幻想的なMellotron Choirs、最後は鐘の音が鳴り、壮大な物語は終わりを告げる。
(Hit-C Fiore)