
地中海の香り漂うItalyやSpainのJazz Rockは大好物で、そこに、その地特有のEthnicな要素が強まっていくところにバンドの個性が出て面白いのだ。Catalunya(Catalonia)から登場したCompanyia Elèctrica Dharmaの場合は、デビュー・アルバム『Diumenge』でのCanterburyな味わいすら感じさせてくれたCoolで端正な作風から徐々に独自性を発揮していくところが面白い。Fortuny3兄弟が中心となって結成され、正統派といってもいいJazz Rockを演奏していた彼らは、Soprano Saxを吹いていたJoan FortunyがCatalan Shawmとも呼ばれる民族楽器Tenoraを導入した事が転機となった。民族音楽的旋律やリズムに加えて、チャルメラのような独特の音色が自らの出自を反映した強烈な個性を発揮し、北Spainの大衆音楽に接近したVaudeville路線を一気に進む唯一無比のバンドとなっていったのだ。高いテクニックを駆使してチンドン屋的Jazz Rock Bandとしてついには爆発的な個性を全開にしていく素晴らしいバンドなのだ。ベースのCarles Vidal、ドラムスのJosep Fortunyのリズム隊はスリリングで複雑なキメも楽々とこなし、Fender RhodesやHammondを演奏する鍵盤奏者Jordi Soleyはバンドに浮遊感と抒情性を加える。惜しくもAggresiveなフレーズや優美なアコギで魅了するギターのEsteve Fortunyは86年に亡くなってしまうが、バンドは80年代、90年代と生き延び、ドラムスのJosepも3年前に鬼籍に入ってしまったが、現在も活動を続けている。
『L'Oucomballa』はCompanyia Elèctrica Dharmaが76年にリリースした2ndアルバム。民族音楽色は前作より強まるも大衆音楽への接近はようやく、ここから始まったばかりといった感じ。このアルバムからTenoraが登場する。
アルバム1曲目“Adeu, Estrella Del Dia”は幻想的なHammondの響きで始まり、JoaoのSoprano Saxがおセンチなメロディーを奏でる。
波の音に導かれてCarles VidalのContrabassがフレーズを弾き始めるイントロが素晴らしい“Ones Nones”。エレピが加わりリズム隊がしなやかに南欧の息吹を伝えていく。
Esteveの地中海の柔らかい陽射しのようなアコギの爪弾きに胸がいっぱいになってしまう“Mitjanit”。
EthnicなフレーズがHypnoticな効果をもたらす“Ball Llunàtic-Toc”。EsteveのArabicなギター・ソロがカッコイイ。そして、いよいよJoanが吹くTenoraが登場する。
B面は“Tocs De Festa”と題された組曲型式となっている。
まず、民族音楽調のThemeからエレピとSaxを軸にした抒情的な展開をみせる“Mater Maritima”。Esteveのギター・ソロ、そしてShuffleにRhythmが変わり、南欧らしい躍動感全開となる。
SharpなエレピのRiffで始まる“Els Pardals De La Rambla”は途中からCarles VidalのMinimalに躍動するベースにJordi Soleyがアコピで激カッコイイRiffを加えると、JoanとEsteveがThemeをUnisonする。
降り注ぐ陽光に輝り輝く地中海の海を思わせるエレピが素晴らしい“L'Oucomballa”。
最後を飾るのは次作以降の民族音楽/大衆音楽への大胆な傾倒を感じさせる“Titu-Tiru-Ritu (Dansa Popular De Vilanova) ”。
(Hit-C Fiore)