
Steeely DanのWalter Beckerの突然の訃報が一昨日届けられた。動揺している。Donald Fagenは偉大なMusicianであるが、Steely Danのあの奇妙な味わいの素晴らしい音楽はBeckerなくしては成立しなかった。BeckerのHumourとFagan以上に一筋縄ではいかない風変わりなChordの使い方とフレージング(予想を覆しTensionを解体してHorizontalな時間の旅で惑わす)はDanに欠かせない大切な部分であったのだ。あぁ、Deacon Bluesがたまらなく沁みる。
心よりご冥福をお祈り致します。
さて、いつまでも落ち込みまくっている場合ではないので、柔道着を着て「気合注入や」とばかりにメンチきってる親分Art Blakeyに喝を入れてもらわないと。この強烈なジャケットでまず決まり。『Bye Bye Birdie』などで知られるLee AdamsとCharles Strouseの名コンビによる Broadway Musical『Golden Boy』の楽曲を元にColpixというレーベルからリリースされた本盤は何年か前に国内初CD化されて即手に入れたのであった。60年代前半のJazz Messengersといえば、いわゆる黄金の3管編成で、音楽監督的存在のTenorのWayne Shorter、TromboneはCurtis Fuller、TrumpetはFreddie Hubbard、もしくはLee Morganといった錚々たるメンツがフロントに勢ぞろい。そしてベースのReggie WorkmanにCedar Waltonのピアノというのは黒っぽさと知性とが実にイイ塩梅の、Hard-BoiledなJazz道場として魅力的である。とはいえテンション高めの演奏ばかりでなく、たまには本作のような変わり種を楽しむのも乙なモノ。上述の6人に御大のドラムス、Bill BarberのTuba、Julius WatkinsのFrench Horn、James SpauldingのAlto Sax、Charles DavisのBaritone Saxを加えた11人編成で、Musical作品とはいえHard Bop魂が注入されて色彩感豊かに演奏していく様が心地良く楽しめるお気に入りの一枚となったのである。ジャケやMusical物ということで引いていては誠に勿体ない楽しいアルバムである。これはShorter、Fuller、Waltonの3人が曲によって、それぞれArrangerとなって、そのセンスを発揮した代物である。と同時に、こういった大編成でのWorkmanと御大の見事な綱さばきに脱帽なのである。
『Golden Boy』はArt Blakey & The Jazz Messengersが63年にColpixに録音したアルバム。
アルバム1発目はまったりイイ感じの“Theme From Golden Boy”。MuteされたTrumpetがイイ味を出している。NostalgicでチョイとRomanticな雰囲気は何ともいえない心地良さ。とはいえ「やったろやないかい!」なジャケからするとチョイ大人しくて拍子抜けしそうになるのも正直なところ。
疾走感に満ちた“Yes I Can”はWayne ShorterのTenorが怒涛のソロで煽りまくり。Workmanのランニングもお見事、勢いに満ちた男気Hard Bopに拍手喝采。
“Lorna's Here”は厳かなOpeningから軽快に展開し、ご機嫌なCeder Waltonのピアノ・ソロにTrumpetソロと続き、Curtis FullerのTromboneソロも惚けた味が最高で、コレは文句なしの指パッチン。再びのWaltonのソロも歌いまくり。
“This Is The Life”は親分Art Blakeyが「野郎ども、いくぜ!」とばかりにいつものドラム・ソロを冒頭でお見舞いして、一気にHorn Sectionがなだれ込んでいくのが気持ち良い。この辺はShorterのArrangerとしてのセンスが大いに発揮されている。
“There's A Party”もArrangerとしてのShorterの才能が見事に発揮されている。イントロから変幻自在にHorn Sectionがつづれ織っていく心地良い音空間に惹きこまれていく。
アルバム最後を飾るのは重厚なBig BandのBallad“I Want to Be with You”。ゆったりとしながらも余裕に満ちたリズムにのって、タイトルのごとくRomanticな空気の中で、それぞれのメンバーがEnsembleによる名人芸を次々に披露してお見事な大団円となる。
(Hit-C Fiore)