
The V.I.P.s~Spooky Toothのドラマーとして知られるMike Kellieは先月の18日に人生の幕を閉じた。
Spooky Toothのこのアルバムは黒くて男っぽいRockを聴きたい時に必ず引っぱり出す名作だ。以前ご紹介したThe V.I.P.'sのLead SingerであったMike Harrisonと米国生まれのGary Wrightという2人のVocalistを擁し、その両者が鍵盤も弾くというスタイルが面白い。バンドはTwin KeyboardとLuther Grosvenorのギターを軸に、ベースのGreg RidleyとドラムスのMike KellieによるSolidで躍動感のあるリズム隊が雄々しくてスケールの大きい世界を描き出す。勿論Bluesが根底にあり、Psychedelicの影響を受けつつ、Toothの場合はSoulやR&B、Gospelも含めた黒人音楽への憧れを彼らなりに表現しているところが良い。そして、それだけではなく英国的な陰影や繊細さも併せ持ち、さらに端々にTradの香りも漂うところがたまらない。60年代に英国でブームとなったBlues RockがPsychedelicの波を受け、よりHardに、Progressiveに変貌していく時代、米国南部への憧れをいち早く音に詰め込み独自の世界観を打ち出したSpooky Tooth。本作がリリースされたのは69年であるが、The Beatlesが『Let It Be』、Stonesが『Let It Bleede』をBlind FaithとLed Zeppelinがデビュー・アルバムをリリースした年であることを考えると非常に興味深い。このレコードを聴くたびにSwampな味わいと英国らしい翳りが一体となった何ともいえない魅力に惹きこまれていく。英国人が憧れる米国南部の音をこれほどQualityの高い形で表現しているのはTrafficと双璧である。この辺はデビュー・アルバム『It's All About a Roundabout』に引き続いてProduceを担当したJimmy Millerの力も大きいだろう。
『Spooky Two』はSpooky Toothが69年にIsland Recordsからリリースしたアルバム。
アルバム1発目はタメのきいたドラムスから始まる“Waitin' For The Wind”。HammondとギターはHardながらGreg RidleyのベースがFunkyですらあるのがToothの魅力。
“Feelin' Bad”はアコギで始まり、徐々に女性Chorusもまじえながら徐々に泥くさくてスケールの大きい世界へ展開していくナンバー。正に米国南部へ向いた音楽であるが英国っぽさは失われていないのが素晴らしい。
Steve Winwoodがピアノで参加しているという“I've Got Enough Heartache”もまた、泥くさいVocalと女性ChorusにGospelの香りが濃厚に漂うナンバー。この高揚感は最高。
Guy Darrellの歌唱で知られるLarry Weiss作の“Evil Woman”。FalsettoもまじえたTwin VocalでHardでSolidなBlues Rockに仕上げている。そして激しいだけでなく英国的な翳りが顔を出すあたりがお見事。華がないなんて言われてしまうLuther Grosvenorだが、ここでの鬼気迫るギター・ソロは素晴らしい。
B面は全てWright単独作の楽曲でしめられ、まずスケールの大きいBlues Rock“Lost In My Dream”で始まる。
Blues Harpで始まる“That Was Only Yesterday”は米国南部どっぷりの音で力強く高揚感に満ち溢れたナンバー。何回も連発してるけど最高としか言いようがないんですわ。WrightのSongwritingも素晴らしい。
Judas PriestもCoverした“Better By You, Better Than Me”。Mike Harrisonの男くさくも翳りを感じさせるVocalが良い。
最後をシメるのはWrightのHuskyなVocalが詩情豊かに歌い上げる“Hangman Hang My Shell On A Tree”。アコギで始まりChorusと演奏がSoulfulなWrightのVocalを盛り上げていくさまは圧巻。管楽器まで加わり演奏も次第に熱がこもって大団円となる。
◎That Was Only Yesterday/Spooky Tooth
心よりMike Kellieのご冥福をお祈りいたします。
(Hit-C Fiore)