Philly Joe's Beat/Philly Joe Jones | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 ジャケットに写っているPhilly Joe Jonesのこの表情。これぞPhilly Joe Jones、最高である。つまり本作はジャケ買いなわけだが、ベースにPaul Chambersとくれば、PrestigeMiles Davis Quartetが残したマラソン・セッションが思い浮かぶ。そしてピアノにWalter Davis Jr.と組んだリズム隊はそそるものがありますな。で、このリズム隊にフロントはといえば、Tenor SaxにBill Barron、CornetにMichael Downsというメンツは中々面白い。というのはBill BarronというTenor Sax奏者が曲者なのだ。正式の音楽理論を学び、作曲などでは真価を発揮するのだが、プレイになった場合は妙に考えすぎというかスリルとAggressiveさを求める向きには評判が悪い。音楽理論を学び幅広いスタイルに対応はできる演奏技術はあるものの、ソロとなった場合にフレージングに彼独自の個性が強く出ているとはいえず、そこに何とも煮え切らなさがあるのだ。とはいえ、Barronの良い部分を弾き出した作品は結構あってTed Cursonとの『Tears For Dolphy』などの諸作は理論家らしいフレーズに冴えがみられるし、Curson作の凝った楽曲との相性もバッチリだ。同じ理論家同志、馬が合ったのか、Cursonの使い方が良かったのか、それらの作品でのBarronはイイ感じだ。一方Cornet奏者のMichael Downsについては詳しいところが全く分からない。この2人のフロントを擁してPhilly Joeが、どんな手綱さばきを魅せてくれるのか?そしてPhilly Joe Jonesらしいヤクザなドラミングがどこまで冴えるのか、ワクワクしながらレコードに針を落としたのである。

 『Philly Joe's Beat』はPhilly Joe Jonesが61年にAtlantcから60年にリリースしたリーダー・アルバム。
アルバム1発目は“Salt Peanuts”。Dizzy GillespieとKenny Clarkeの手による痛快なBebopナンバー。小気味良く突っ走るWalter Davis Jr.のピアノ・ソロ、MuteをきかせたMichael Downs、そしてBill Baronのソロへと続く。スピード感溢れるDownsやBarronのソロが爽快だ。何より軽さに流されずピリッと要所を抑えた Walter Davisのピアノが良い。 最後をシメるPhilly Joeは長めのドラム・ソロを披露。
一転して“Muse Rapture”。Barronのソロは、このテンポだとお得意の考えすぎな部分がなきにしもあらずだが、続くDownsのBop魂溢れるソロ、そして何よりWalter Davisのピアノ・ソロ、それに絡むPaul Chambersが素晴らしい。
お馴染み“Dear Old Stockholm”は緊張感のあるイントロから日本人好みのあの哀愁のメロディーが流れてくる。BarronのTenorは不完全燃焼ながら、ここでも高らかに楽器を鳴らすDownsのソロが潔くて良い。何よりPhilly Joeの気風が良いドラミングが冴えまくっているのが良い。
Dizzy GillespieJohn Lewisの共作“Two Bass Hit”。ここではBarronのTenorソロが大々的にFeatureされている。勿論、Philly Joeの軽業師のごとき飄々とした叩きっぷりもお見事。
ベーシストJimmy Garrison作の“Lori”はMuteをきかせたDowns、抑制されたPhilly JoeのドラミングがCoolである。そしてBarronは煮え切らない相変わらずの俺節。Barronのソロに続きDowns、Chambers、Walter Davis、そしてPhilly Joeと快調なソロが続く。
Philly Joe作の“Got To Take Another Chance”。これは中々小洒落たナンバー。Walter Davisのピアノ・ソロは短いながらも絶品だし、Downsも冴えている。BarronのTenorは、ここでは切れ味鋭くて良し」。
最後をシメるのは三度目のGillespieの曲“That's Earl Brother”。これは2管がキマりまくったThemeが最高。最後までMichael DownsのTrumpetは大健闘。Barronのソロへ絡むDownsもイイ感じ。そしてWalter DavisがFunkyで流麗なソロで魅了する。気分良く最後を飾るアルバムで一番お気に入りのナンバー。
(Hit-C Fiore)