
Armando Trovajoliは勿論イタリアを代表する映画音楽家であり、自分が現実逃避したい時にはTrovajoliが手掛けた映画音楽を聴いて別世界へ連れて行ってもらうのが常であった。ちょっとエッチで洒脱、小粋といったイメージが思い浮かぶその音楽は確かに90年代のあの頃の自分にとっては欠かせないものであった。Piero PiccioniやTrovajoliの弟子である大好きなPiero Umiliani同様に、映画音楽を手掛ける前はJazzを演奏していた。父親がViolin奏者であったTrovajoliは幼少時からクラシックの教育を受け、Violin、ピアノ、そして作曲を学んでいるが、Big Band JazzがTrovajoliの心をとらえた。本作はそんなTrovajoliが残した甘々のStringsと共演したJazz Piano Trioの作品である。数曲で女性SingerのMiranda Martinoが甘美なVoiceを披露している。どちらかといえば、イージーリスニング寄りというか高級BGMなノリではあるが、Piano Trioのみでの演奏ではTrovajoliのピアニストとしての渋く骨太の演奏が聴ける。ベースに名手Berto Pisano、ドラムスにPiero Umiliani Quartetでも活躍するSergio Contiというメンツ。Trovajoliのもっと、そういったSwingyな演奏が聴きたければ『Trovajoli Jazz Piano』という作品もある。
『Magic Moments At "La Capannina" 』は58年にArmando Trovajoli E La Sua Orchestra名義でリリースされたアルバム。
アルバムの1曲目は甘く優雅なStringsにTrovajoliの力強いタッチで心地よいSwing感をともなったPiano Trioによる“On The Street Where You Live”。
続いてもStrngsが、これでもかも甘々と装飾しつつTrovajoliが都会的風情を表現した“How About You”。
イタリアらしい歌心が盛り込まれた“Ponto Final”は夢心地で思わず別世界へTripさせられてしまう。
イントロが激カッコイイ“The Lady Is A Tramp”。T速いTempoで骨太のPiano Trioの演奏が、冒頭3曲の甘い雰囲気と対照的で面白い。
タイトル曲“Magic Moments”はBurt Bacharach作のCuteなナンバー。HarpsichordとStrings、女性Voiceが雰囲気を出してTrovajoliのピアノがリズミカルに飛び跳ねる。
Ary Barroso作の“Rio de Janeiro”ではピアノとHarpsichordが絶妙のコンビネーションで南国情緒をかき立てる。
ひたすらRomanticな“Kiss Me, Kiss Me”。
ピアニストEddie Heywood作の“Canadian Sunset”。SweetなStringsと対照的な黒っぽく無骨なTrovajoliのピアノが面白い。
ここまでいくとStringsもかなり甘口胸焼け気味ながらTrovajoliのピアノがイイ感じで演奏を締めている“Close To You”。
Nelson Riddleがヒットさせたポルトガルの曲“Lisboa Antiqua”。
心地よいベースに導かれて始まるPiano Trioによる“Love Is Just Around The Corner”。Trovajoliの本領発揮の指パッチンなナンバー。
Al LernerとFrederick Loeweの名コンビ作でMusical映画『Gigi(恋の手ほどき)』のTheme曲“Gigi”。
イタリアの歌手Tony Dallaraが歌ってヒットした“Come Prima”。甘々ではあるが、こういうメロディーもElegantに仕上げ、途中にフォービートを挟む小粋なTrovajoli。
最後をシメるのは何とPaul Ankaの“Diana”。お上品かつ大人なLatin風味。良くも悪くも高級BGMに仕上げているが、これこそTrovajoliの茶目っ気である。
(Hit-C Fiore)