Musicas De Billy Blanco Na Voz Do Proprio | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 建築について専門的に学習していない門外漢の自分がこういった意見を述べるのは、どうかとは思うが、音楽と建築は非常に共通する部分が多いような気がする。CompositionやArrangementは勿論、演奏についても本人が意識しているか否かは別として、一人一人が細部にわたって綿密に構築していく作業と、それら幾つかの作業が複雑に絡み合って構成されていく全体の構造とが一体となって、その最終完成形をお届けする方々に対して、心地良くて美しいと思っていただける結果に導かれていく事は理想だと思う。勿論、建築の場合は、そこに実用性や利便性、場所との関連性なども要求されるわけであるが。例えば耐久性などについては音楽も建築も、すべて同様ではないかもしれないが、共通するところも多いのではないかと思っている。それはLe Corbusierと建築技師として出会ったIannis Xenakisや、その2人とVareseとの関連性を持ち出すまでもなく、音楽と建築は深いところで結びついているのかもしれない。
 建築家を本業としながら、とても余技とは思えない優れた作曲/作詞の才能で素晴らしい作品を世に送り出したBilly Blanco。Tom Jobimとの共作で『Sinfonia Do Rio de Janeiroリオデジャネイロ交響曲)』を手がけたことでも知られるBlancoは、本盤で才能と魅力に満ちた楽曲を披露する。そして何と自ら歌うのだ。確かに、技巧的には彼より優れた歌手は沢山いるだろうが、作家自身が自作曲を歌う魅力は、その素人っぽいVocalでさえも味わい深いものにしている。鼻にかかったどこか、気の抜けた、Vocalが案外沁みるのだ。多分、一生大事に聴き続けていくだろう音盤である。

 『Musicas De Billy Blanco Na Voz Do Proprio』はBilly BlancoElencoから66年にリリースしたアルバム。Oscar Castto NevesがArrangementsとOrchestrationを担当している。
アルバム1曲目“Mocinho Bonito”。この曲のイントロのOrchestrationは何回聴いても涙が出そうになるくらい大好きだ。それに続いて、素人っぽい朴訥としたBlancoのVocalがまた素晴らしい。短いながらも、FunkyでJazzっぽいピアノ・ソロも最高。
これまたイントロが抜群の“Rio Do Meu Amor”は、まったりとした曲調ながら、Rioへの想いを語る抜群のStorytellingぶりを変幻自在の旋律を散りばめたBlancoの才能を感じさせる。
夢見心地のStringsに導かれてBlanco節ともいうべき泣きのメロディーが炸裂する“Minha Vida Com Tereza”。それでいながら、どこかElegantなのもBlancoらしい。
これまた物語とも実話ともつかない歌詞が面白い“Branca De Neve”。JazzyなOscar Castto Nevesのアレンジも素晴らしい。
ギターの弾き語りでしみじみと歌われる“Tio Alfredo”。これまたBlancoの素朴で実直なVocalが胸を打つナンバー。
Secretaria”は健全な男性諸氏であれば、誰もが共感する内容の小粋なナンバー。イントロも歌詞もメロディーも最高。
Domingo Azul”は「青い日曜日」というタイトルが何とも意味深なBossa Nova。最後に飛び出すBlancoのScatも最高。
洗練の極みといった男前な歌詞Jazz Boss風の演奏が最高にCoolな“Tchau Mesmo”。
再びギターの弾き語りで“Praca Maua”。タイトルはRioの下町にあるマウア広場を歌った正に繊細でLyricalなBlancoの持ち味が発揮されたナンバー。
最後を飾るのは、Blancoのもう一つの魅力であるHard-Boiledな語り口が素晴らしい“Estrada Do Nada”。
(Hit-C Fiore)