
それにしても数々の逸材を生み出したMagma人脈恐るべしである。鍵盤奏者をみてもZaoを結成するFrançois Cahen、以前ご紹介したMichel GraillierやBenoît Widemann、Patrick Gauthier、Violin奏者Didier Lockwoodの兄Francoisも短期間ではあるが在籍していた。そして本日の主人公であるJean.Pierre FouqueyもMagmaに在籍していた鍵盤奏者なのである。Fouqueyは元々はForgasというPatrick Forgasという人物が中心となったグループに在籍していた。その後Magmaに加入し、白熱のLive盤『Retrospektiw Vol. 3』や83年作の『Merci』でエレピを弾いていた。Magmaの鍵盤奏者Benoit Widemannの77年ソロ・アルバム『Stress!』や続く79年作『Tsunami』の中でOberheim Polyphonicを弾いていたりするのである。後者では“Let's Go, Kids Of The Drum”という楽曲を提供してFunkyなソロを弾いている。83年には初リーダー作『Tactics』 をリリースしている。さて、それに続く作品である本盤はドラムスにWeather Report出身のPeter Erskine、ベースにはBill Evans Trio最後のベーシストとなったMarc Johnsonを迎えたピアノ・トリオ作である。
『Railroad』はJean.Pierre Fouquey Peter Erskine Marc Johnson名義で86年にリリースしたアルバム。知的なEnsembleでFouqueyの紡ぎだす美しく繊細なメロディーを支えるといった感じで、トリオが互いの技巧を尽くして激しくインタープレイでぶつかり合うJazzでは決してない。どちらかというと、その美しい旋律と3人の絶妙のバランスによる叙情的な構成美を味わうアルバムである。つまり、やもすれば聞き流されてしまう可能性もある音盤でもある。ここではErskineの粒立ちの良いハットやライドの妙技やJohnsonの低音でうねりながら歌うベース、Fouqueyの欧州の香り漂うElegantな旋律に身をゆだねてみたい。
アルバムの1曲目はピアノのブロック・コードの繰り返しとErskineのライドが心地良い“L‘Etoile Du Nord”。
これまたErskineの絶妙のシンバル・ワークとJohnsonのぶっとく重心の低いベースが最高な“Red Line”。
牧歌的ともいえるピアノのたおやかな旋律に続いてErskineのタイトなドラミングと音数を抑えたJohansonの知的なアプローチが光る“Cruise”。
欧州的なLyricismが炸裂したピアノ・ソロ“L'Oiseau Bleu”。
Johnsonのベースが歌いまくる“Time Zone ”もEuropeanな詩情を感じさせるナンバー。
Erskineのライドの繊細なタッチと低音でうねるJohnsonのベースが心地良い“Chorale”。
アルバム最後を飾るのはErskineのスネアが心地良く響くUp Tempoの“Mobile”。アルバムの中では幾分Popなナンバーで幕を閉じる。
(Hit-C Fiore)