御用学者や御用コンサルタントが的外れな御注進をするためか政治家センセのお笑いレベルの経済オンチぶりには日々驚かされる。
橋下氏や前原氏の経済オンチぶりにもビックリしたが安倍氏の発言はお笑いではすまされない深刻なレベルである。
新興宗教のお布施や雨乞いレベルである。「日銀はインフレ目標3%(笑)を達成するまで無制限に緩和しろ!金をばらまけ!デフレなのは日銀の金のばら撒きが足りないからだ!」
誤解を招かないように言っておくと自分はインフレ・ターゲットを全て否定するわけではない。
ただ、今の日本で3%(笑)ものインフレ・ターゲットを達成するまで金をばら撒けと強制させるのは全く適切ではないということだ。
安倍氏は一体、現在の日本の財政事情を把握しているのだろうか?
自公、民主党がどれだけ日本政府の借金を増やしてきたのか理解できていないのだろう。
少子化で急激に人口減少し高齢者社会となっている日本で行った場合に、金利の上昇から国債暴落、そして国債を大量に抱え込んでいる金融機関が損失を抱え貸し渋りが起こり、景気が急速に悪化するのは必至である。
金利が1%上昇したら地銀などを含む邦銀が保有する債券の値下がり損は計6.4兆円になると4月の日銀の「金融システムレポート」でも試算されている。
現在の日本の長期金利は0.7%台である。これが急激に上昇したらどうなるか中学生でも理解できるはずだ。
しかも金をばら撒けば無条件にデフレが解消されるわけでも景気が良くなるわけでもなく、ましてや失業率が改善するといった確証はないのだ。
そもそもデフレの原因は国民の将来への不安から来る買い控えと人口減少がその根底にあるからだ。
圧倒的に供給過剰で需要が減っているのが現在の日本だ。
そんな状況下にある国でいくら金をばら蒔いても景気は上昇しない。
本質的な問題は何も解決しないからだ。
また一方的に円高デフレ悪者説を展開するのはあまりにも軽率で情緒的である。
総務省が発表した現在の日本のGDPに占める輸出の依存度はもはや低く、20%にすら届かない10~15%台である。
日本は内需大国になっていたのだ。
しかも日本の企業は円高を見越してとうに円建てにし、中小企業でさえ海外生産を開始している。マトモな企業はとっくに円高対策を実施して対応しているのだ。
また日本企業による海外企業のM&A(合併・買収)が2011年に総額5兆円を超え、過去 最高を記録するなど企業は円高のメリットを生かしているのだ。
海外の特許も格安で取得でき、原材料費も安く調達できるメリットもあり、それを最大限に生かしている企業も多い。
加えて、今まさに原発が停止して火力 発電向け液化天然ガス(LNG)の輸入が増えている現状で円安になったら貿易赤字は大変な事になる。
円安のメリットを享受できるのは特定の既得権益の人々に限られ、円安による不利益は国民全体にふりかかってくるのである。
そもそも日本のマネーの供給量はGDP比で米国よりも多いのだ。
安倍氏が主張する建設国債の日銀引き受けも、土建業界にのみバラマキという旧態依然とした経済政策であり、財政再建を遅らせ日本の景気は急激に悪化し失業率も悪化していくだろう。
金融緩和をやり続けたオバマは4年たっても失業率を改善できず、景気回復も遅れ失敗してきたのである。
一時的には通貨安の影響で株価は上昇する。しかし、それは長くは続かない。
いくら金融緩和しても物価だけが急上昇して給与が上がらず、景気回復すらできずにリストラによって失業率が急激に上昇してきたヨーロッパの二の舞である。
今、必要なのは国民の将来の不安を取り除き、需要を喚起させていくこと、無意味なバラまきではなく成長産業に資本投下していくことだ。
雇用の悪化はピンハネ、中抜きの派遣業者が跋扈しているのが主な原因だ。企業は派遣社員を増やすことによって人件費を削減するという麻薬を知ってしまった。少しでも人件費が上昇しようものなら、さらなるリストラに拍車がかかるだろう。人件費のコスト上昇は企業の競争力の低下だと彼らは呪文のように唱えてきた。派遣社員はますます使い捨てである。終身雇用が崩壊し、いつクビになるか将来に不安を抱える正社員もまた消費を控えて慢性的な需要不足に拍車がかかっていくだけである。また、年金を減らされて老後に不安を抱えるのは年金を優遇されている公務員と議員以外の日本人はみな同じ。
多くの日本人が消費を控え、需要は急激にしぼんでいっているのが今の状況だ。
日本では、金融緩和をしたら企業の業績は上がっても、確実に従業員給与が減少しているのが現実である。
そして家計消費の減少によってデフレが起きているのだ。
有能な経営者は需要こそが一番大切と考える。需要がないところに金をばら撒いても景気は良くならない。インフレを無理矢理作っても多くの国民は結局、給与に反映されず、ただ物価上昇で苦しむだけだ。
景気が良い時にインフレは生まれてもインフレにより景気が良くなるわけではないのが今の日本だ。
目の前にある巨額の借金を無視して、巨額の財政支出が不良債権として若い世代や将来の子供達に重くのしかかる。それらを無視して日銀にのみ責任を押し付け、ウケを狙った強引な、あたかも強いリーダーを気取った安倍氏の財政金融政策はポピュリズムそのものだ。
まずは定数削減が実現するまで議員歳費の2割削減する約束を実行してみてはどうか。
財政規律を無視した安易な金融緩和は日本経済を悪化させるだけである。
(Hit-C Fiore)