Link Wray/Link Wray | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

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 Link Wrayといえば革ジャン、サングラス、リーゼントといったStereotypeなRock'n Rollerのイメージがまず思い浮かんでしまうのは致し方ない。何よりThe WhoThe KinksからPunkの連中にまで大きな影響を与えたインストにして放送禁止になった代表曲ともいえる“Rumble”が醸し出すムードが強烈な上に、さまざまな写真や映像で目にするお姿も正に、それモノ。70年代後半にRobert Gordonのバックでギターを弾きまくる勇姿は、まもなく50歳とは思えない筋金入りのRock'n Rollerといった感じであった。Wrayの曲は、90年代に入ってからも映画『Pulp Fiction』や『Desperado』でも使用されるなど、一部で盛り上がっていた。自分は、その一方でLink WrayがEggs Over Easyの大好きなアルバム『Good 'N' Cheap』をProduceしたり、The Neville BrothersがCoverした“Fire and Brimstone”のカッコ良さに、Link Wrayのもう一つの違う魅力を探し出そうとしていた。そんな時に巡りあったのが本盤である。WildでLoudなギタリストLink Wrayの一面しか知らなかった自分には同名の別人かと思わされた作品であった。当時、StonesBeatlesをはじめ英米の音楽家たちが夢中になってのめりこんでいった米国南部の音が鳴り響いていた。何よりも驚きだったのは、決して上手くはないけれど魅力的なWrayのVocalである。そして土臭いDobroやアコギを弾くWrayがMandlinやGospel色強いChorus隊やピアノと作り上げる南部の風景が目に浮かぶサウンドに一発でやられた。Link Wrayは、North Carolina州のDunn生まれであり、幼少時からGospelBluesを聴いて育ったのであった。そして、共に音楽を作り続けてきた兄弟と小屋に録音機材を持ち込んで作ったスタジオで完成させた本盤では、そのWrayの出自を明らかにしたサウンドが、南部男らしい力強さと優しさを感じさせてくれてる。ジャケットからしてNative Americanの血を引くWrayの主張が感じられる。

 『Link Wray』はPolydorから71年にリリースされたLink Wrayのソロ・アルバム。PrimitiveRawなギターを弾くWrayの持ち味を、土臭く詩情溢れる米国南部の音に置き換えたサウンドは、粗さ無骨な手作り感が、南部独特の暖かみを生み出し、Swampな魅力に満ちた作品となった。Vocal、ギターは勿論、Dobroやベースを弾いてWrayが大活躍。Produceは兄貴のVernon WrayとドラムスのSteve Verroca。兄Vernonも翌年に『Wasted』というSwampの名盤を残している。
一発目の“La Da Da”は女性Chorusを伴いWray自身が弾く動き回るベースとドッシリしたドラムスにのった男くさい歌いっぷりが光る。ここから4曲たて続けにドラムスのSteve Verrocaの曲が続く。
Take Me Home Jesus”でも、WrayのVocalは南部男の泣きまで感じさせるほどで、こういったGospel色の強い曲を歌うWrayに驚かされる。
ピアノのRiffから始まる“Juke Box Mama”も泥臭いChorusSlideが絡むところなどタマラんナンバー。
ギターのRiffのLazyなノリがカッコ良すぎる“Rise and Fall of Jimmy Stokes”。粘っこいリズム隊も最高。
Fallin' Rain”はWrayお気に入りのBob Dylanの影響が感じられる。
イントロから飛び出すPercussionDobroが作りだす鳥肌モノのサウンドに持っていかれる“Fire and Brimstone”。
Ice People”は美しいメロディーを持つ名曲。こういう女泣かせのメジャーセブンス系の曲も書けちゃうわけですな。
God Out West”はPopな曲調でWrayのウネウネと弾きまくるギター・ソロが聴ける。
Bluesyな“Crowbar”ではWrayの淡々とした歌やDobroのバックでギター・ソロの狂おしい泣きが炸裂しているのが面白い。
Black River Swamp”はMandlinが切ない、しみじみとした南部詩情にやられるナンバー。
最後はHowlin Wolfで知られるWillie Dixon作の“Tail Dragger”。最後に荒くれチンピラなギターを披露するWrayが最高。

最高っす!

Fire and Brimstone/Link Wray

(Hit-C Fiore)