Canto Di Primavera/Banco del Mutuo Soccorso | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 Giacomoおじさんとの突然のお別れ。それは、Banco del Mutuo Soccorso(以下Banco)の何度目かの来日公演を目前に控えた今年の2月、予想できなかった知らせであった。69年にRomaで結成されたBancoの看板ともいえる巨体から発せられる表現力のある美声は永遠にバンドから失われることになった。確かに体調の衰えを心配はしていたが、まさか自らの車を運転中に交通事故によって、その尊い命が奪われてしまうとは考えてもいなかった。GiacomoおじさんことFrancesco Di Giacomo、享年66歳。あの迫力に満ちた、時に聴く人々を暖かく包み込む歌声をもう生で聴くことができないのは本当に残念だ。自分がGiacomoおじさんのVocalを一番心地よく楽しんできたのは本盤かもしれない。『春の歌』というシンプルなタイトルが示すように、それまでの攻撃的で野性的な躍動感とパワーに満ちながら奇想天外の展開で魅了してきた従来の路線から、爽やかでカラッとした地中海の風と柔らか眩い光を感じさせるようなEnsembleの妙歌を中心に聴かせるように変化した本作。実は個人的にはBancoのアルバムで一番のお気に入りである。考えてみればPFM (Premiata Forneria Marconi)が77年のJet Lagで地中海へと向い、続く『Passpartu』でさらにAcoustic楽器を中心に民族色を出した路線を深めていく時代。Mauro Paganiも1stソロアルバムで独自の地中海路線を提示し、Areaがあの名作をリリースした78年。そして79年がやってきた。

 『Canto Di Primavera』はBanco del Mutuo Soccorso79年にリリースしたアルバム。
Acoustic PianoのArpeggioとベースのHarmonicsで始まる“Ciclo”はインスト。管楽器とSynthesizerが彩りを添える見事なEnsembleは心なしか地中海の心地よい風のようだ。
民族色豊かなイントロに心躍るタイトル曲“Canto Di Primavera”は豊かな声量を持ったGiacomoおじさんの素晴らしい歌声に何ともホッコリさせられる。歓喜に満ちたこのナンバーは本当に素晴らしい。地中海の柔らかい陽射しに包まれて陽気に踊り出すかのような祝祭感が最高だ。暖かみのあるおGiacomoじさんのVocalが味わえるナンバー。
キレキレのリズム隊がカッコイイ“Sono La Besta”は変拍子が炸裂したナンバー。アコギと管楽器の使い方もお見事。
この時代らしいイントロのSynthesizerのRiffが、やはりどこか温もりのある感じでお気に入りの“Niente”。Giacomoおじさんの優しく語りかけるようなVocalが徐々に熱を帯びて、壮大に歌い上げていく様に変わっていくのに心打たれる。
美しいピアノに導かれてGiacomoおじさんの美声がElegantに歌い上げていくE Mi Viene Da Pensare”。
心地良い3拍子のRhythmで始まる“Interno Citta”はGiacomoおじさんの抑えたVocalが良い。Synthesizerとベース、Trumpetが本当に気持ち良い。そしてPercussionが鳴り響く躍動感に満ちた展開に続く。
幻想的高貴な“Lungo Il Margine”。
最後は地中海の香り漂うインストで“Circobanda”。うねりまくるベースとドラムスと心地良く鳴り響くPercussionが素晴らしい。
長い冬が続くかもしれない。でも、春は必ずやってくる

さようならGiacomoおじさん、そしてまたどこかで。

E Mi Viene Da Pensare/Banco del Mutuo Soccorso

(Hit-C Fiore)