
安易に癒しの音楽という言葉を使いたくはないけれど、以前も書いたように、あの震災が起きてからの日々は、まともに音楽を聴く気分にならなくて、やっとの思いで、なんとか音楽を聴く気分になった時に自分が求めた音楽。それは正に、そういう言葉が当てはまるのかもしれない。どれだけ音楽によって、心を落ち着かされて、励まされたことか。この音盤も、その中の一枚。一人多重録音という作品は世に数あれど、実験的で革新的な音楽もあれば、本作のように、ゆったりと心安らかな気分にさせてくれる音楽もある。どちらも好きではあるけれど、あの時に手が伸びたのは、本盤のような作品であった。アコースティックな楽器を中心に、民族楽器の織り成す音の重ね方が、穏やかでなんとも心地良いのである。
さて、Pepe Mainaは、イタリアのMulti-Instrumentalistで70年代後半から、現在も活動を続けている。あの Rock in Opposition (RIO)にも参加したMilano出身の偉大なバンドStormy Sixにも在籍していたことがあるという。本盤『Il Canto Dell'arpa E Del Flauto』でもそうだが、全ての楽器を殆んど一人で演奏して多重録音というのが彼の基本スタイル。特に民族音楽に影響を受けた、Minimalで牧歌的インスト中心というと、Mike Oldfieldを連想する。Mainaの場合はイタリア的な、特に地中海音楽を感じさせるところが気に入っている。
『Il Canto Dell'arpa E Del Flauto』はPepe Mainaの公式デビュー・アルバム。77年作。
『フルートとハープの歌』と邦題が付けられて日本盤のレコードやCDも出ている。それにしても、これはジャケットで、かなり損をしている音盤。Mainaは自分が所有するNonsense Studioで、30年以上もずっと多重録音の作品を作りつづけてきた。78年ぐらいには、以前書いた Ancona出身の地中海JazzrockバンドAgoraにもPercussion奏者として参加していたこともあるようである(正式録音は残されていない)。
オープニングはReverbが深めにかけられたアコギと打楽器が神秘的な“Il Canto Dell'arpa E Del Flauto”。
“Il Canto Dell'Arpa E Del Flauto (Parte 1°)”は地中海を空高いところから、ゆったりと見下ろしているような雄大なスケール感を感じさせる。メロディーが地中海的で良い。
煌くようなアコギのArpeggioにたおやかなギターが絡む“Spring Song”。Percussionが気持ちよい。
幻想的に始まり、FluteやギターがTablaにのせてソロを始める前半部から7拍子の躍動的な後半部に展開していく“Two Balls & Afrika”。
ゆるやかなSoundscapeが展開される“Il Canto Dell'Arpa E Del Flauto (Parte 2°)”はFluteがやはり印象的。
最後を飾る“San Nicola”は、アコギのカッティングから始まりFleteや打楽器とシンセが地中海の眩い光を思わせる歓喜の調べを繰り広げる。
MainaのOfficial Website
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http://www.pepemaina.net/
(Hit-C Fiore)