
The Rascalsは最高である。勿論The Young Rascalsの頃から最高なのだ。とにかく簡単に言葉では説明できないが、それはFelix CavaliereのSongwritingとVocal、そしてHammondの演奏がいかに素晴らしいかということなのだ。勿論、彼らの魅力はそれだけではない。Jazzも演奏し、Drive感に満ちた力感溢れるドラミングが魅力のDino Danelli、CavaliereのSongwriting Partnerであり、共に看板となったそのVocalはあの山下達郎さんにも影響を与えたEddie Brigati、PsycheなギターもBluesやCountry風味もお手のもののGene Cornish、全員が個性的で才能に満ちていた。The Rascalsこそ米国史上最高のBlue-Eyed Soul Groupである。しかし、彼らの魅力は単に黒人音楽に憧れ、それを黒人顔負けに演じているだけではないのだ。その歴史的、文化的背景、さらに社会的な状況も理解した上で黒人音楽に敬意を表して彼らなりのSoul Musicを演奏しているところが素晴らしいのだ。New Jerseyで65年に結成された彼らはCornish以外はItalian Americanであり、The Four SeasonsやLaura Nyro同様に黒人音楽を愛し、人種を越えた多彩な音楽性を身に着けたところが彼らの最大の魅力だ。Rene Magritteの代表作ともいえる『La Grande Famille(大家族)』をジャケットにした本作は、そんな彼らの意欲に満ち溢れた作品。しかし、それとは裏腹に商業的には彼らの頂点から下り坂へと向かうきっかけとなった作品として語られてしまうのは残念だ。公民権運動の支持や、African-Americanがいない音楽祭には出演しないなどと主張したことなどから、この時期のRascalsは保守的な白人層の反感を買い、南部では不買運動や公演のキャンセルが続出したほどであった。それでも最後まで筋を通し続けた姿勢は立派である。そして勿論、本作も素晴らしい出来で、R&B、Soul、Funk、BluesやLatin、Psychedelic Music、Country Music、Jazzを彼らなりに咀嚼した真のSoul Musicである。
『See』はThe Rascalsが69年にAtlanticからリリースしたアルバム。ベーシスト不在である彼らには前作から引き続きChuck Raineyが参加、Ron Carterも2曲参加してサウンドに幅を持たせている。Cavaliereが主導権を握り、Eddie Brigatiとの共作がとうとう1曲になってしまったのも当時の彼らの状況を物語っているようだ。
アルバム1曲目はGene Cornishの歪ませたギターがカッコイイ疾走感あふれるアルバム・タイトル曲“See”。息のあったChorusとDino Danelliの迫力のあるドラミングが最高。
“I'd Like To Take You Home”は起伏のあるメロディー・ラインをSoulfulに歌い上げるFalsettoのVocalとChorusが素晴らしいShuffleナンバー。
Cornish作の“Remember Me”はCountry Rockの味のつけが楽しいナンバー。
Cavaliereの黒々としたHammondが最高なBlues“I'm Blue”。本作で唯一のBrigatiとの共作となる。
Sitarも飛び出すPsychedelicでRagaな“Stop And Think”。Danelliのドラミングも素晴らしい。
60年代に活躍したSoul Music DuoThe Knight Brothersのヒット曲“Temptation's 'Bout To Get Me”のCoverはEddie BrigatiとFelix Cavaliereが見事にSoulfulなDuoとして歌い上げている。何度聴いても鳥肌モノの最高のBlue-Eyed Soulナンバー。
CavaliereのSongwritingとアレンジのセンスに脱帽の“Nubia”。イントロのRon Carterのベースや、突然姿を現すStrings、Hubert LawsのFlute、Chorusの使い方が絶品。
JazzピアニストJoe Bushkinがピアノを弾くノリノリの“Carry Me Back”。途中で入るHorn隊やDino Danelliの気合入ったドラミングもイイ感じ。
Gene Cornish作のBlues Rock“Away Away”。
これまた唸るHammondとChorusがSoulfulな“Real Thing”。
Chuck RaineyのベースもブリブリでVenturesみたいなエレキも炸裂する“Death's Reply”は日本の70年代アングラ歌謡曲的な味わいも感じさせる。
最後を飾るのはAbstractなイントロから激カッコイイFunky Rockに展開する“Hold On”。
◎Hold On/The Rascals
◎See/The Rascals
(Hit-C Fiore)