Dolce Acqua/Delirium | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 「甘い水」という名前が付けられたイタリアの観光名所として知られるDolceaqua。DolceaquaはLigria州にある。フランス南部にあるCôte d'Azurから東に弓なりに細長く拡がるRivieraはイタリア北西部のRiviera Ligureへと続く。Ligria州の海岸はそんな美しい場所。地中海に面したLigria州では高級保養地でもある美しい漁村Portofinoや世界遺産に登録されているCinque Terreなどが知られるところであるが、是非Dolceaquaにも目を向けて欲しい。「光の画家」Claude Monetも愛した小さなComune。廃墟と化したRoma帝国時代の名残が残る城と太鼓橋がある小さな村。デビュー・アルバムに、そんなタイトルを付けたのはDeliriumという5人組のグループ。Genova出身でFluteとVocal担当のIvano Fossati、ギターのMimmo Di Martino、鍵盤のEttore Vigo、ベースのMarcello Reale、ドラムスのPeppino Di Santoというメンツ。FluteとVocalで強い印象を残すIvano Fossatiは残念ながら本作のみで脱退してしまうが、本作はFluteアコギVibraphoneなどアコースティック楽器を使っているのがイイ感じで、この時代にいそうでいない中々得難い独特の味を出している作品となった。アコースティック楽器に男くさいVocalとドタバタ系のリズム隊、どこか野暮ったくて、混乱状態でちぐはぐなんだけど、そこが面白い。

 『Dolce Acqua』はDelirium71年にリリースしたデビュー・アルバム。
アルバムはIvano Fossatiの吹く切ない音色のFluteの響きで始まる“Preludio (Paura)”。Vibraphoneとアコギが絶妙の寂寥感を醸し出す。対照的な2人の男性Vocalもイイ感じ。なぜかドラムスだけが当時のイタリアに多かったバタバタ系なのも微笑ましい。
バタバタドラムに男くさいアーアー男性Chorusの男祭りの最中に抒情的なFluteが絡んでくる様が何とも面白い“Movimento I: Egoismo”。ピアノも男っぽいアタック感の強い弾きっぷりが良い。
ピアノの4分打ちで始まる“Movimento II (Dubbio) ”。 Mimmo Di Martinoが男っぽく歌い上げて終わりかと見せかけてエンディングに突如、管弦楽団が登場する唐突な感じも面白い。
インストの“To Satchmo, Bird And Other Unforgettable Friends: Dolore”はFluteとピアノ中心のUnisonや、途中でフォービートになったりするがピアノのリズムが甘すぎるところがご愛嬌。Fluteソロは中々聴かせる。
ジャンジャカとアコギかき鳴らしにFluteで始まる“Sequenza I & II: Ipocrisia-Verità”もインスト。Hammond男性Scatがイイ感じ。
Johnnie Sayre:ii perdono”もアコギのストロークにFluteが背中で男泣き系の感傷的なVocalを盛り上げる。ベースとドラムスが頑張ってJazrockな表情も見せつつ再び男の哀愁一人旅なエンディングへ。
土着的なRhythmにのった民謡風の“Favola O Storia Del Lago Di Kriss: Libertà”。唐突に現れるMellotronが謎すぎる。
最後をシメるのはMajor Seventhの響きとFluteが感傷的にさせるイントロから始まる“Dolce Acqua: Speranza”。しかし、この曲も最後は男くさいScatとVocalが入って男たちの挽歌となってエンディングを迎えるのであった。

Dolce Acqua (Speranza)/Delirium

(Hit-C Fiore)