Fuchsia Swing Song/Sam Rivers | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

BLACK CHERRY

 Blue Noteワンホーン・アルバムというと、個人的にはSam RiversFuchsia Swing Song』が思い浮かぶ。ミーハーなジャケ買いで手に入れた、このアルバムを学生時代に部屋に飾っていたこともあって思い入れのある作品だ。Milesも手こずったであろうSam Rivers65年の作品『Fuchsia Swing Song』は、この恐るべき、後のFree大魔人40過ぎてからの初リーダー作。Freeという言葉に恐れをなしてはいけない。このアルバムは、恐らく彼の作品にしては一番聴きやすいかもしれない。Freeバリバリではなくて、いわゆる新主流派的な演奏も、この人にしてみれば朝めし前なのだ。

 今年、85歳になるのに現役で活動を続けるパワーは驚異的だ。父親がGospel音楽をやっていたというRiversはOklahoma生まれ。Bostonに進出したRiversは当時13歳であった天才ドラマーTony Williamsと活動を続けてきた。64年の夏にRiversはMiles Davis Quintetに加入する。Tony WilliamsがMilesに脱退したSax奏者George Collemanの後釜として、Riversを推薦したらしい。Milesの初来日公演のメンバーとして『Miles in Tokyo』で、そのアナーキーな個性で盟友Tonyといっしょになって、他のメンバーを過激に挑発する様子が聴ける。頭のおカタいMilesファンからは評判よろしくないかも。若き俺様ドラマーTonyと別世界へ逸脱していくRiversの自由度の高い演奏。が、なんとHerbie HancockRon Carterも2人のAggressiveな演奏に素早く反応している。この辺のMusicianの身体能力の高さは驚くべきだ。という次第で、リーダー泣かせの自由人Riversは当然のこと、Milesのところから早々に姿を消してしまう。

 そんなヤバイ雰囲気を漂わせるRives翁だが、理論派でもある彼の創作意欲は相当なもの。ボストン音楽院で学んで50年代後半から作曲を始めたらしいのだが、独創的なCompositionのみならずOrchestrationにも注目したい。が、Riversといえば、どうしてもLoft Jazzというイメージが専攻してしまう。彼が妻と経営したRivbea Studioは70年代のFree Jazzの時代にNew YorkのLoft Jazzの拠点となったわけだし。その時代の作品の中には凡人の自分にはついていけないブツもあるが、わりと聴きやすい作品もある。例えば75年のImpulse!からの『Sizzle』ではVibraphnやギターとのフォーマットで自らピアノを弾く。別に時代に迎合するでもなく、キャッチーなメロディーも飛び出したり、カッコイイThemeを書く才能もあるのだ。また60年代の作品でもボビハチの名盤『Dialogue』やAndrew Hillの『Change』(最初はRivers名義だった)での名サポートは流石である。
そして、なんと詩人白石かずこさんとの『Dedicated to the Late John Coltrane and Other Jazz Poems』。
BLACK CHERRY


Fuchsia Swing Song』ではピアノに硬質で一風変わっていながらもFlexibleな才能を持つJaki Byardを迎え、Tonyとの名コンビでHard-BoiledなJazzをかましていく。Ron Carterも頑張って2人に対応している。Composerとしても優れた才能を持つRiversのオリジナルで全曲固めたアルバム。疾走するオープナーのアルバム・タイトル曲は生命感溢れるTonyのシンバル・ワークにシビレル。妻に捧げたBallad“Beatrice”も素晴らしい。

Ronを残しHancockとJoe Chambers、そしてFreddie Hubbardを迎えた次作『Contours』も気に入っている。

 (Hit-C Fiore)