Cut The Cake /Average White Band | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

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 Average White BandScotland出身のバンドだが、米国での活動が主体だったのでアメリカのバンドだと思っている人もいるかもしれない。よく言われていることだけどAverage White BandというCynicalなバンド名はアメリカ人ならつけないかもしれない。その名の通り結成時にAfrican Americanは1人も含まれていなかった。

一時いたるところで彼らの“Pick Up the Pieces”のCOVERを聴かされていい加減食傷気味だったことがある。

別に、この曲が嫌いなわけではないが猫も杓子も演奏するのを聴かされるとチョッとキツイものがあるのだ。

皮肉なもので彼らの一番のヒット曲なんだろうが、この曲は彼らの音楽の中のごく一部にすぎない。なぜなら彼らの魅力の一つはHamish Stuart黒くて抑制のきいたVocalであるからだ。SexyなFalsettoの使い方が実に上手いのだ。黒っぽいけれど熱唱しすぎない、熱くなりすぎないところが堪らない。だからインスト曲だけでは彼らの本当の魅力は伝わらない。とはいえ、このヒット曲がなければ彼らはメジャー・シーンに浮上できなかったかもしれいない。

Hamish StuartといえばPaul McCartneyRingo Starrのバンドでご存知の方もいるだろうし、Aretha FranklinDavid Sanbornとも共演してきた幅広い音楽性と職人気質の確実なスキルを兼ね備えた人物である。このバンドのもう1人の重要人物がAlan Gorrieだ。Alan GorrieはAverage White Bandを結成する前にOnnie McIntyreとともに、Forever Moreというグループで活動していた。このAlanとOnnieの2人が実は今でも再結成されたAverage White Bandで活躍している。Sax奏者のMalcolm DuncanとRoger Ballの2人はJohn Wettonが在籍していた事で有名なブラス・ロック・バンドのMogul Thrash出身。Roger Ballは鍵盤も演奏する。ドラムのRobbie McIntoshBrian AugerOblivion Expressで活躍していた。そのドラミングは白人とは思えないほどFunkyだったがバンドの成功直後の74年に、この世を去ってしまう。代わりに加入したのが面白い事にOblivion ExpressにいたことのあるSteve Ferroneである。彼はまた英国のFunkグループBloodstoneにも在籍していた。アルバム『Cut The Cake』から加入した。彼のみ白人ではないけれど英国出身らしく端正なドラムを叩く人である。

Average White Bandは73年Eric ClaptonのComeback Concertが契機となって脚光をあびた。

骨太な部分と醒めた部分が同居したFunk魂と、時折かなりエロ度が上昇するMellowな感覚が気に入っているバンドである。


 『Cut The Cake』はAverage White Band75年に発表したアルバム。

Arif MardinがProduceし大ヒットした74年作の名盤『AWB』とLatin音楽の要素も取り入れた曲など名曲揃いの傑作『Soul Searching』に挟まれた作品であるが個人的にかなり気に入っているアルバムだ。

アルバム・タイトル曲“Cut the Cake”のキレ味抜群のカッティング・ギターとSteve Ferroneのしなやかなドラミングが最高である。Robbie McIntoshのドラムも好きだけど、この頃のFerroneは繰り出すFilの一つ一つが気持ち良いタイミングでキマッている。

サンプリング・ネタとしても知られる“School Boy Crush”のDopeなノリも素晴らしい。この手のHypnoticなFunkに

彼らの持ち味が特に発揮されている。真っ黒のイナタいFunkも好きだけど、いかにも白人的な少し醒めたFunk。

It's a Mystery“もエレピとギターが心地良いナンバー。CoolなHamish StuartのVocalも少しIsley Brothersを思わせるChorusもイイ感じ。

Groovin' the Night Away”も、その名の通り彼ららしいノリが良いナンバー。

Leon Wareの名曲“If I Ever Lose This Heaven”は溶けてしまいそうなMellowチューン。女性といる時など、かなりお世話になった想い出の曲でもある。

Cloudy”は女泣かせのBallad。個人的にたまにアコギで演奏したりする曲。


このアルバムは聴きすぎてボロボロになった中古レコードしか持っていない。手荒な扱いをしてノイズが多いレコードだけど、今でも時々、無性に聴きたくなるのである。


                       Hit-C Fiore