今年最も聴いた1枚かもしれない。
今や大御所といった趣のあるBrittany出身のDan Ar Braz。
90年代にIrelandのDonal Lunny、 BrittanyからAlan Stivellら総勢約80名を集めたBrittanyHéritage des Celtes(ケルトの遺産)という音楽プロジェクトのDirectorを務め、世界的に有名になった。ギターを弾き自らのオリジナル作品も提供した、このプロジェクトは世界的にも大成功を収めた。
Celtic MusicはIrelandやWalesやScotland、Cornwall、Isle of Manは勿論、GaliciaやBrittany以外にもCanadaやUSにも伝承されている音楽。
元々はBreton Trad Music界の重鎮Alan Stivellの元で腕を磨いたDan Ar Brazは民族意識の発露としてだけでなく、様々なジャンルを越えて自らのルーツとなる音楽を拡散させていく。
Alan Stivellのバンドは後にMalicorneを結成するGabriel Yacoubなど多くの逸材を輩出しているが、Dan Ar BrazはStevallと同じ志を持ちながらも、さらに活動の場を英国に求めていく。
Dan Ar Brazは76年にFairport Conventionに参加する。(正式なスタジオ録音のアルバムは残っていない。)そういえばAlan Stivellの77年の傑作アルバム『Before Landing』にはLyn DobsonやFairportのDave Swarbrickといった英国勢の参加が興味深かった。
さてDan Ar BrazはFairport Conventionへの参加を経て、自らの音楽に様々な音楽の要素を取り込みながら、故郷に戻り、いよいよソロ活動を開始していく。Magmaのメンバーとも交流を深めながらProgressiveな歩みを進めていく。試行錯誤を繰り返しながらも、それらは90年代の音楽的成功へ結実していく。
『Douar Nevez』はDan Ar Brazの77年作のソロ・アルバム。
ProducerはMalicorneのHugues De Courson。
Fairport Conventionへ加入した事はDan Ar Brazにとって大きな経験となったようだ。Fairport加入後にBrittanyに戻って発表された、この作品では以前のソロ・アルバムにあった中途半端な迷いはなくなっている。
MagmaのBenoît Widemannが鍵盤で参加しているがWidemannもAlan Stivellのバンド出身。 BassはFairport ConventionからDave Peggが参加している。ドラムのMichel SantangeliもAlan Stivellのバンド時代からの盟友。
柔軟なリズム・セクションの上でエレキもアコースティックを見事に使い分けて作品を仕上げていくDan Ar Braz。元々がロックな演奏も得意であった上に、深くTradを吸収した上で獲得したテクニックに魅了される。Celtの力強さと繊細さを持ち合わせたDan Ar Brazのギターは時に鋭く、またある時は詩情豊かな音世界を作り上げていく。
Patrig Molardの操るUilean PipesとFluteが繊細なアコースティック・ギターの調べと調和して描き出す幻想的な風景は、まるでジャケットのように神秘的で美しい。
そして何よりEmmanuelle Parreninが参加しているのである。その時点でこのアルバムの素晴らしさは約束されたようなものだ。
次作ではFrancis Moseといった元Magmaのメンバーが参戦する。Hextagoneというレーベルには結局3枚のソロ・アルバムを残すDan Ar Brazであるが個人的には本作『Douar Nevez』がダントツに好きである。
今年は、この周辺の音を結構聴き漁った年であった。
Hit-C Fiore