Steely Danの、特にDonald Fagenの熱烈な信奉者である自分にとっては避けることのできないアルバムだった。
NY生まれのカナダ人であるMarc Jordanの1stアルバム『Mannequin』。
Gary KatzがProduceした作品でDonald Fagenが参加している。
Marc Jordanは現在も活躍中であるが自分は初期の3枚のレコードしか持っていない。
2ndアルバムの『Blue Desret』とライブ盤『Secrets Marc Jordan Live』。
いずれも中古レコード屋さんでGetしたものであり、それぞれに好きな作品であるけれど、このデビュー・アルバムが一番好きである。
その理由はDonald Fagenが参加しているからではない。いや、それも少しはあるかもしれないが。
勿論、Gary Katzが売り出しに力をいれて豪華なミュージシャンが勢ぞろいしているからでもない。
この作品にはMarc Jordanの眩いばかりのソング・ライターとしての才能が、荒削りで洗練されきっていないながらも、光り輝いているからだ。
JazzやR&B、Latin音楽の影響を受けた音楽性と、彼独自の視点により描かれる歌詞によって個性的な世界観を作り出している。
同時代の同じような音楽的傾向をもった人々一味違うところは、異邦人的な客観的な立ち位置を持った、ある種Hardboiledともいえる歌詞によるものが大きい。
次作『Blue Desret』の作品“I'm a Camera”などは正に、それを言い表している。
それは映像を喚起させてくれ、自分が孤独な都会人になったような気分を味あわせてくれる。
誤解を恐れずに言えば大好きな松田優作主演のTVドラマ『探偵物語』の工藤俊作的気分である。
ゴージャスなミュージシャンに囲まれて決して上手いとはいえないVocalで歌われていく世界は独特だ。
彼は客観的にCoolに、時には思いっきりシニカルに物事を捉えていく。
ジャケットの、白いスーツを着てポーズを気取ってみたものの、自信なげな表情と意味ありげなマネキン。
次作のアルバムも爽やかな西海岸風で豪華絢爛に飾り立てられながら、どこか醒めた目で孤独な世界観を持った男。
それはDonald Fagenの奇妙に捻れたHardboiledな世界観ほどではないが実に味わい深い。
『Mannequin』は78年の作品。
Gary KatzはSteely Dan関係以外のProduceでは結構外してるような気がするが、この作品は成功作。
それにしてもGary Katzさんの気合一発で東海岸、西海岸の腕利きさん達が大集合。
期待の高さがうかがい知れる。
Chuck RaineyにLarry Carlton、Dean ParksにTom ScottとSteely Danにはお馴染みのメンツ。
Jay GraydonとDavid Fosterというコンビは実は苦手なものがあるけれど、結構好きなセッション・ワークもある人達である。
“Survival”はエレピとギターのカッティングが実に気持ち良いオープニング・ナンバー。
ChorusとSaxが入って少ししゃがれた個性的なMarc JordanのVocalが乾いた大人の雰囲気を醸し出す。
“Jungle Choir”はイントロからモロSteely Danの世界ですな。コード・ワークなんか聴いても彼のバック・グラウンドにはJazzがあると思われる曲。
“Marina del Rey”はSteel Panが大活躍のTopicalな雰囲気漂う曲。リラックスしたMarc JordanのVocalとChorusの掛け合いが楽しい。
“Red Desert”はかなりDonald Faganを意識したようなMarc Jordanの粋なVocalとJazzyな演奏が良い。
このアルバムの中で一番好きな曲。
“One Step Ahead Of The Blues”はエレピのソロがカッコイイWaltzで艶っぽいSaxが最高。
この曲を初めて聴いた時、こんな渋くてHardboiledな大人の世界に憧れた。
“Lost Because You Can't Be Found”は淡々とした乾いたVocalが素晴らしい最後を締めるのに相応しい名曲。
この作品は人恋しい秋から冬にかけて聴くと、かなり気分だなと改めて思った。
Hit-C Fiore
