Night Lady/Johnny Griffin | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 

 今年も多くの才能ある方々がこの世を去っていった。

2ヶ月以上たってしまったけれど大好きなミュージシャンJohnny Griffinも、その1人。

Johnny Griffinが今年7月25日フランスにある自宅で亡くなった。

享年80歳

それは数時間後に控えたギグを目前にした突然の出来事であったらしい。

このニュースを聞いた時、人生最後の日を現役で迎えたのがGriffinらしいと思った。

半世紀に渡り現役を続けてきたGriffinは60年代にヨーロッパでの生活を始めた。

Chicago生まれのGriffinはT-Bone Walkerともバンドを組んでいた事があったという。

初めてJohnny Griffinの事を意識して聴いたのはどの作品だったろうか?

Blue NoteArgoRiversidePrestigeといったレーベルに残されたリーダー作よりもClarke-Boland Big Bandの『Sax End』でのGriffinとの出会いが先だったように記憶している。

ヨーロッパに活動の拠点を求めたJazzのミュージシャンは数多い。

Kenny Clarke - Francy Boland Big Band(以下CBBB)はヨーロッパを中心に活動としていたビッグ・バンド。

世界各国スター・プレイヤーが集結して迫力あるBig Band Jazzだけでなく洒脱なJazzも聴かせてくれる。

そんな事もあってか、Johnny Griffinのリーダー作で一番好きな作品は『Night Lady』ということになる。

この作品はCBBBのリズム・セクション(つまりリーダー格3名)を従えたワン・ホーン・アルバム。

さらにCBBBの他の中核となるメンバーも加えた『Lady Heavy Bottom's Waltz』のダイナミズムも好きだけど、Johnny GriffinのTenorを堪能するなら、やっぱりこの作品だと思う。


  『Night Lady』は64年作。

Johnny GriffinのテナーにKennyClarkeのドラムとくれば、両者とも好き嫌いのあるタイプかもしれない。

音数が多く、自己主張が強いと言われる両者だが、ここでのプレイは実に冴えまくっている。

Griffinの豪快な部分が損なわれることなく、大人の魅力も垣間見られるところが良い。

Francy Bolandは単にピアノを弾き、楽曲を提供するだけでなくメンバーの魅力を引き出すのが上手い。

そして作品にEespritに富んだElegantな味わいを加える。

一発目の“Scrabble”はKenny Clarkeの小気味良いドラムで始まりJimmy Woodeのベース・ランニングときて、GriffinのTenorが加わっていくところ、あえて抑え目に始まるところが良い。

吹き倒しタイプのGriffinが、いつもと違う大人の抑制されたムードから、盛り上がって結局やらかしてしまうところが最高。

Summertime”をアップでカマすあたり、Bolandのアイディアなんだろうか?

というのはこの曲でのピアノ・ソロが、このテンポにバッチリはまった素晴らしいもの。

黒くてユーモアと知性に溢れているのはBolandの持ち味で、ブロック・コードの崩し方がカッコイイ。

適度にヨタったノリは意図的に甘さを排除して黒さを演出している。

ベタなBalladでないからGriffin御得意の起伏に富んだフレージングも嫌味にならない。

Old Stuff”はピアノのイントロがカッコイイBluesyなナンバー。

この手の曲では水を得た魚とばかりに飛ばしまくるGriffinのソロが熱い。

そしてJimmy Woodeのとぼけたようなベース・ソロが最高。

このアルバムで個人的に一番好きな曲。

アルバム・タイトル曲“Night Lady”はFrancy Boland作のBluesyなJazz Waltz

この曲もイントロのピアノが素晴らしい。

抑え目に入りながら結局いつもの調子になってしまうGriffinの吠えっぷりがCoolでセンス抜群のピアノ・ソロと好対照で気に入っている。

Little Man You've Had a Busy Day”はTenorが入ると“Somebody Watch over Me”を思わせる出だし。

こういったBalladで大人の魅力でSexyにキメタかと思えばエンディングのフレーズでお茶目さんになってしまうGriffinが楽しい。

All the Things You Are”、快調に突っ走っていく、こういったナンバーを聴くと気分が高揚してくる。

でも、これがラストの曲。
少し位、野暮ったくてもいい、小さくまとまらずに豪華にスカッとさせてくれるのがGriffinの持ち味。

本作でのGriffinは煽られつつもエキサイティングしすぎてクドくなる一歩手前で大人の余裕を見せる。

こんなGriffinも堪らなく魅力的だ。


                     Hit-C Fiore