この訃報には言葉も出なかった。
突然だった。
9月15日に65歳で他界したPink Floydのオリジナル・メンバーである鍵盤奏者
Richard Wright/リチャード(リック)ライト。
Syd Barrettの時もかなりのショックだったけれど、これにはかなり凹んだ。
言葉は悪いかもしれないがSydの時は悲しかったけれど、心の準備はできていたから。
初期のPink Floydの音楽性に自分は大きな影響を受けたのだ。
静かなる人リックの鍵盤演奏やVocalには、そのルックス同様に英国紳士たるGentleなんだけれど確固とした存在感が感じられ、大好きであった。
リックのエフェクター処理やSEの使い方など空間を上手く生かした音響的なアプローチはPink Floydにはかかせない。
テクニカルな部分よりもバンドのコンセプトを理解した上での雰囲気を重視したプレイが素晴らしい。
そう、シンプルなんだけれどバンドを静かに、やさしく包み込むような感じ。
例えばHammondにしてもイケイケではなく、たゆたうようなTrippyな雰囲気を重視したプレイ。
Pink Floyd特有の幻想的な雰囲気や広大な宇宙を思わせる浮遊感はリックなしには成立しなかったと思う。
そして、なんといってもリックの作る曲とVocalが好きだった。
一番好きな曲は3rdシングル“Apples And Oranges”のB面だった“Paintbox”。
それから『神秘』の“See-Saw”。
そして同アルバムに収録されたSydのSlideが最高にサイケな“Remember A Day(追想)”。
『原子心母』に収められた“Summer'68”も良い。
BeatlesのGeorge Harrisonにも共通する、いかにもBritishなアンニュイで、たよりないけれど味のあるVocal。
そういえばリックもジョージも、カリスマを持った強烈なリーダー2人に隠れがちだけどバンドにはなくてはならない存在だった。
リックのソング・ライティングについて語るなら
勿論、『狂気』に収められた名曲“虚空のスキャット”を忘れてはならない。
そして“Us and Them”、ペダル・ポイントを上手く使ったこの曲は後に発表されるソロ・アルバムにも通ずる曲。
『Wet Dream』は78年に発表されたRicahrd Wightの1stソロ・アルバム。
Hipgnosisの印象的なジャケットも大好きで気怠い夏を思わせる。
フランスでレコーディングされたこのアルバムに漂う、どことなくヤルセナイ空気、Wetな感覚は一歩間違うとイージー・リスニングになってしまうのだが、そこが日本人的な部分に訴えかけてくる。
オープニングを飾る“Mediteeanean C”はSnowy Whiteの泣きのギターが印象的なインスト。
まったく地中海的ではない音だと思うんだが、その辺はご愛嬌でなんとなくPeacefulな雰囲気を持った曲。
メジャーとマイナーを行き来する曲調がリックのなんとなく気弱で、泣き笑いのイメージを連想させる。
“Against the odds”はリックらしい曲でアコギが泣きですな。
この曲を聴きながら、この記事を書いていたら、しんみりしてしまった。
“Holiday”はリックのGentleなVocalがイイ味を出している、このアルバムで一番好きな曲。
Mel CollinsのSaxが活躍する“Funky Deux ”でアルバムは幕を閉じる。
奇しくも、このアルバムは78年の9月15日にリリースされている。
当時のリックが置かれた環境を考えれば、このアルバムに漂う微妙な空気が痛々しいほど伝わってくる。
一般的にはピンク・フロイドの第3の男なんだろうけれど、
リック・ライトは自分にとって、かけがえのない存在であり、大好きな音楽家である。
↓大好きな曲(Pink Floydの自分が一番好きな時代の映像)
さようなら、リック。
心よりご冥福をお祈りいたします。
Hit-C Fiore