Barracuda/Quantum Jump | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 このジャケットの、何と言ったらいいのか捉えどころのない感じ。
音楽の方も同様で、それに加えて英国独特の斜に構えた感じが最高である。

Quantum JumpはProducerとしても有名なRupert Hineが中心となり73年に

結成されたグループ。

Hine以外のメンバーが、これまた自分好み。

CaravanJohn G Perryがベース、ドラムにThe Peddlers(最高!)の

Trevor Morais

最初のアルバム制作時にはMark Warnerというギタリストがいたが脱退。

トリオ体制になり通好みのゲストを迎えて本作『Barracuda』を発表、新たに

ギタリストを加えたツアー後に残念ながら解散してしまう。

Punk旋風が吹き荒れる77年、彼らのような音が受け入れられるわけはないが、

後のシーンに登場するBritish Jazz Funkの遥か先を行って英国独特の毒を

隠し持ったようなQuantum Jumpの存在は貴重。

Quantum Jumpとは元々は量子跳躍という物理学の用語で飛躍的な変化という

ような意味で使用される事もあるらしい。

元々リーダーのRupert HineはPurple Recordsから2枚のかなり英国的な趣味

のソロ・アルバムを出していた人。

またJohn G Perryもベースも作曲もアレンジもセンス抜群で、Hineと作った

1stソロ・アルバム『Sunset Wading』は大好きな作品。

それに加えてModなトリオThe PeddlersにいたTrevor Morais叩き出すビートは

気持ち良すぎ。

洒落モノ達が自分達のやりたい音楽を好き勝手にやったって感じが良い。


 『Barracuda』は77年にリリースされた。

ゲストにCaravanからmulti-instrumentalistの Geoffrey Richardson。そしてSimon JeffesPenguin Cafe Orchestra(この時の名義はPenguin Café String Ensembl)を率いて参加。

British Jazz界の名手Henry Lowtherも参加している。(Brass Arrangementも担当)

とぼけた味の“Don't Look Now”で始まる、このアルバムの魅力はなかなか伝わりにくい。

あまりにも品良くまとめすぎてサラッと聴き流されてしまう音で良く聴くと、どこかストレンジな部分をオブラートに包んだ音楽。

個人的にはタイトル曲“Barracuda”のCool捻じ曲がったPop感覚がお気に入り。

ポップなんだけど捻りのきいた音楽は、雑食性で高い音楽性とテクニックに裏打ちされたもの。

そこに英国的な、シニカルで人を食ったようなスパイスも忘れない。

Blue Mountain” “Europe On a Dollar a Day”では元Vinegar JoeのVocalのElkie Brooksがキモ。

Funky異国情緒漂うサウンドはHineが後に手がけるCafe Jacquesを彷彿と

させる。

Cafe Jacques無国籍サウンドと泥臭いVocalが強調されていた分、分かりやすかった。

それに比べればQuantum JumpのHineの白人的なVocalは結構クセがある。

変なVocalだけど、よく聴けば味があって個性的だ。

何でもありの音楽性で、その魅力が伝わりにくく、ポップな音楽性も知性が邪魔して徹底しきれなかった

テクニックもセンスも抜群なんだが。

素直にオサレなJazz Funkをやればいいのに必ず変な事をやってしまうのが

いい。

その辺がジャケットにもあらわれている気がする。

女の子の前でもオサレにキメ過ぎるのを良しとせず絶対に、どこかでギャグとかボケをかましてしまう悲しい性というか。

でも、そんなQuantum Jumpが好きなんだな。


                     Hit-C Fiore