フランスは才能溢れるベーシストの宝庫である。
Henri Texierは、その中でも重鎮ともいうべき存在。
そしてベーシストのみならずComposerとしても優れた才能の持ち主として知られる。
Phil WoodsのEuropean Rhythm Machine(以下ERM)での活躍やAldo Romano、Michel Portal、Louis Sclavis、Joachim Kuhnといったヨーロッパの名手達と組んだ数多くの名演で世界中に知られる存在となった。
中でもドラムスのDaniel Humair、ピアノのGeorge Gruntz(後にGordon Beck!)と組んだERM。
ここでのダイナミックでヨーロッパ的な典雅な要素も持ちあわせたFlexibleなプレイヤーぶりで強烈な印象を受けた。
70年代はAldo RomanoとTotal Issueというグループを結成してロックのフィールドにも挑戦している。
(Texierの70年代のソロ・アルバムにも異種交配の素晴らしい成果が表れている。)
そして今でもジャンルの壁を飛び越えて世界中の才能豊かな音楽家達と共演し、あくなき音楽の探求を続けている。
France の Label Bleu という個人的に大好きなレーベルがある。
Texierはこのレーベルを代表する存在であり、このレーベルの創設時から作品を発表し続けている。
Parisの音楽シーンは常に国境やジャンルの垣根を越えて様々な音楽が交差して魅力的な作品が生まれていく。
初めてTexierを生で見たのはJazzin' Parisという複数のグループが出演するコンサート。その演奏に圧倒された。
神奈川県立音楽堂で行われた、そのコンサートは、実はMichel Portal率いるグループ目当てだった。
しかしPortalのグループも予想通り素晴らしかったがTexierのQuartetは強烈であった。
Portalの演奏でもFrancois Moutinというベーシストを目の前で見れて感激したのを覚えている。
それにしてもContrabassを自由自在に操り個性溢れるメンバーたちと芳醇なサウンドをクリエイトしていくTexierの存在感はスゴイ。
『Mad Nomad(s)』は95年、当時フランスの音楽シーンで才能を発揮し始めていた若手を集めて録音された。
勿論Label Bleuからの発売。
それにしてもサックスのJulien LourauにギターのNoel Akchoteである。
そして鍵盤がBeligrad出身の天才バルカン野郎Bojan Zulfikarpasic。
力強く突き進む若さだけではなく伝統に対する深い理解を持った上で新しい音楽を追求するフレッシュな感性が素晴らしい。
それをリードするTexierの知性とエネルギーに敬服。
優雅で生命感に溢れる響きが眩しい。
貧欲に様々な音楽を取り込み新しい音楽を創造しようとする姿勢が良い。
その豊穣な音世界は美しくて刺激的でカッコイイ。
そして人々の生活、芸術を脅かそうとするグローバル資本主義に対する痛烈な批判だ。
タイトル曲“Mad Nomad(s)”から感じ取れる彼らのメッセージはPositiveで力強い。
“Dezarwa”は伝統に敬意を表しながらも常に前進する刺激的なBop精神に満ちたナンバー。
Texierのオリジナル以外のメンバーの手による曲も素晴らしい。
Bojan Zulfikarpasicの“Go!”、Sebastien Texierの“The Band Over the Clouds”もお気に入り。
Hit-C Fiore