弱々しい陽の光りに照らされた琥珀色の水面に顔を覗かせる枯れ木。
その枯れ木の姿を映して、かすかに揺れている水面の写真を、逆さまにした
ジャケット。
素朴で、そこはかとなく哀愁が漂う、実に味わい深いアルバムの内容を見事
に表している。
ZeppelinとPurple、CSN&YからのVocalの誘いを断った男という宣伝文句
は、この素晴らしい作品を前にはもはや、どうでもいいことだろう。
まず基本にBluesがあるであろう魂のこもった歌とギター。
紆余曲折を経て、アメリカに渡って、かのTom Doudをプロデューサーに迎え
作り上げた作品は音楽の化学反応の最良の瞬間をすくい取った傑作。
後半の2曲はプロデューサーEddie Offordの手による英国でのセッションだ。
自身のルーツであるBlues,Soul、R&Bに加えてアメリカ南部サウンドの影響を
見事に吸収して英国人にしか出せない、独特の憂いのあるスワンプ・サウンド
を作り上げた。
歌とギターの魅力だけではなくてコンポーザーとしてのTerry Reidの実力が
いかんなく発揮されている。
『River』は73年にAtlanticから発表だれたTerry Reidのソロ3作目。
前半4曲は、なんとDavid LindleyがSteel&Slide Guitarを弾いている。
さらにリズム・セクションの黒人2人の作り出すタイトで、ムチのようにしなる
Grooveが気持ちいい。
ドラムは後にHumming birdを結成するConrad Isidore。
そしてゴムマリみたいな弾力性のあるベースはIke&Tina TurnerのReview
で弾いていたというLeo Miles。
David LindleyはKaleidoscopeというAcidの香りプンプンのカントリー色の
強いバンドで、脱欧米的な音階を採り入れるなど、非常に個性的なギターを
弾いていた。
この英米白黒混合バンドの生み出すスワンプ・サウンドの芳醇な味わい。
そして力強い面とナイーヴな面を併せ持つソウルフルなTerryのVocal。
1曲目の“Dean”では Funkyなギターカッティングに、いい感じでLaid-back
したLindleyのlap steelが絡み、タメのきいたFunkyなリズム・セクションが
心地よいGrooveを生み出していく。
“Live Life”は Terryのアコースティック・ギターのカッティングで始まり、4人
がダウン・トゥ・アースなリズムの塊となっていく様がカッコイイ。
途中のTerryのスキャットもたまらない。
B面は対照的にTerryのアコギの弾き語りにWilly Boboのコンガが心地よい
メランコリックな名曲“River”で幕をあける。
この曲ではLatin-Blazilianなテイストも持ち、型にはまらない様々なスタイルの
音楽を求めてアメリカに渡ってきたTerryの魂のこもった名曲となった。
最後の2曲のアコースティック・ナンバーでは、ソウルを求めながらも、運命に
翻弄されて英米を渡り歩いた男がたどり着いた男泣きの世界である。
Hit-C Fiore