「ジャッジメント」 小林由香 双葉社 ★★★ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

大切な人を殺された者は言う。「犯罪者に復讐してやりたい」と。
凶悪な事件が起きると人々は言う。「被害者と同じ目に遭わせてやりたい」と。
20XX年凶悪な犯罪が増加する一方の日本で、新しい法律が生まれた。それが「復讐法」だ。
目には目を歯には歯を。この法律は果たして被害者たちを救えるのだろうか?

 

ジャッジメント

 


被害者の家族たちが、被害者と同じ方法で加害者を殺すことが認められるという法律がもしあったら…なんてことは現実にはあり得ないし、あるべきだとも思わないけれど、その気持ちは十分にわかる。

 

僕が遺族の立場であったならそう思うだろうから。

 

犯人を百回殺したところで、被害者は返ってこないけれど。

 

どれほど犯人を傷めつけたところで、たぶん虚しさしか残らないけれど。

 

でも、それでも何もできない現行法よりはマシなのかもしれないと思う。

 


そういう意味ではこの作品には物足りなさが残る。

 

加害者に対する復讐がほとんどなされないからだ。

 

いやもっとやっとけよ、としか思わない。最終的には良い話みたいになっているのが不満。

 

そんな風に書くと、どんだけSだよと思われそうだけど、復讐法ってそういうもんでしょ。

 

 

全体的に細部の甘さも気になる。


復讐法の行使者が逆に加害者の家族に襲われるとか、そんなこといくらでも予測できるのにその対策もせずに法律つくっちゃダメだろ、とか。

 

そういう意味において、この復讐法はまだ発展途上中。試行錯誤の中にあるのではないかと感じた。

 

新しい設定で描く物語は細部がしっかりしていないと物語がペラペラになる。

 

これはその典型。

 

小説そのものも復讐法も発展途上。

 

テーマは面白いしいろいろと物語が膨らんでいきそうな気がするだけに惜しい。

 

もう一度チャレンジしてほしい。