「ダイヤモンド殺人事件」 吉村達也 講談社 ★★ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

掟やぶりの結末を書いた推理作家志望の学生が狙っていたものは?

芥川の「鼻」をラストまで読まなかった悲劇とは?

高速道路の大渋滞が決めた男の運命とは?

如月透という偽名を用いた殺人者が陥った意外な罠とは?



ダイヤモンド殺人事件 (講談社文庫)



上の梗概、見てください。


スゲー面白そうじゃないですか???


「鼻」を最後まで読まなかったからといって、どんな悲劇がおとずれるんだろう?


って、絶対読んでみたいって思いません???



吉村達也の作品っていっつもこう。


でも何回も騙される。


キリねえ。



「お楽しみはこれからだ」は、


著者が「このオチは、コロンブスの卵みたいなもので、早く見つけた者勝ち、みたいなところがありますね」と書いているのが笑えた。


こんなオチ、普通の作家は思いついても使わないだろ。




「時計台は語る」はこの短編集で唯一、まともなミステリになっていると思う。


時計が算用数字とローマ数字で文字盤の表記方法が違うというところは僕も気がついていませんでした。




「君の瞳に恋してる」はどこを面白がればいいのか、さっぱりわからなかった。


これは一体、何を書きたいのかと真剣に悩んだ。




「鼻」もまるっきり面白くなかった。


第一、小学生時代の何の証拠もない殺人について、まだ恐喝されているわけでもないのにその相手を殺害しようとする意味がわからん。




「大井松田-御殿場 渋滞20キロの逆転」は、


北村薫さんの「覆面作家、目白を呼ぶ」のパクリかと思ったら、


本になったのはこちらの方が先でした。失礼。


でも、口の開いた瓶の中でどうして蜂はおとなしくしてたの?


北村薫さんのほうはそこにもちゃんと合理的な説明があったけれど。




「如月透の犯罪」も…どうして殺そうとしちゃうのか、さっぱりわからん。


この作家の登場人物たちは簡単に追い詰められすぎだよ。




全体を通じての感想としては、つまらない作品集というよりも、どこを楽しめいいのかわからない作品集と言った印象。


驚きも、衝撃も、意外性も何もない。


平凡とか凡庸という言葉が一番ぴったり。


腹が立つくらいつまらない作品のほうがまだ印象に残るだけマシなのかも。