アンフェア女王の独裁により、平和が失われた魔法の国。
ここでは、「意思を持つトランプ」を使った理不尽な決闘によって処刑が決定されてしまう。
善良なる時計屋のウサギ・ピンクニーは、店に迷い込んできた少年・三途川理を助けてやったとばっちりで、この「絶対勝てない」トランプゲームに挑むことになってしまい……。
極悪非道な名探偵・三途川理10歳の事件簿!
※物語の核心部分に触れています。未読の方はご注意を。
三途川理がまだ10歳の頃のお話。
ミステリですが世界観はファンタジーです。
って、森川作品はいつもか。
負けたら死(または魔法で卵にさせられちゃう)というルールのもと、
神経衰弱やババ抜き、ポーカーなどカードゲームに挑むという展開は、
カイジのようなデスゲーム系の知力と戦略を駆使した心理戦をつい期待してしまいますが、
まったくもって、そんなことはない。
何しろ、三途川理シリーズですからね。
普段は三途川理が掟破りの卑怯な手を使うのですが、
今回は敵の方が、ハンパねえ。
だって、カードがトランプの兵隊が変化した姿で、
神経衰弱やババ抜きのときに「私は、ハートの6ですよ」とか「私はジョーカーですよ」とか喋っちゃう。
そんなん、ゲームとして成り立たないでしょそもそも。
ってことで、今まで善良な市民はアンフェア女王とその部下にいいように蹂躙されていたけれど、
三途川理はそうはいきません。
こっちはこっちで、カードをぶん殴って気絶させ喋れないようにするとか、
果てはカードを破って兵隊を殺しちゃうとか、
どんだけだ。
トリックとかロジックではなく、どちらかと言えばマジック。
というか、何ならただの暴力。最後は肉弾戦になっちゃうし。
でも、モチーフが「不思議の国のアリス」であるならば、
この不条理とメチャクチャぶりも、さもありなんというところかなあ。