自称ひきこもりの友人、鳥井真一が風邪で寝こんでいたある日、僕、坂木司は同僚から、同期の女性の様子がおかしいと相談を受ける。
慣れない探偵役をつとめた僕が導き出した解答は…。
また、木村栄三郎さんのもとで出会った男性と地下鉄の駅で見掛けた少年の悩み、そして僕自身に降りかかる悪意の連続、それらの真実を鳥井はどう解明するのか。
ひきこもり探偵シリーズ第二弾。
「青空の卵」に次ぐ第二作目だが、正直もう飽きてきた。
人が死ななきゃ推理小説にならないというのではもちろん、ない。
日常の些細な謎も料理の仕方によっては素晴らしい物語になるということは、
北村薫さんや近藤史恵さんが証明してくれている。
だが、謎が魅力的なものであること、
その解決に至るプロセスが論理的であることの二点は、
人死にがあろうがなかろうが、推理小説である以上、絶対条件だと僕は思う。
だが、本作はあまりにも推理のプロセスが強引で、なおかつ偶然に頼りすぎている。
第二話の「銀河鉄道を待ちながら」は誰も彼もがたまたま知り合いだったりするし、
第三話「カキの中のサンタクロース」は鳥井がどうして正解にたどり着いたかがまったくわからない。
鳥井自身の言葉を借りるならば「ヒントが少なすぎて解答は複数」というヤツなのに、
何の根拠もなく「これが正解」と答えを弾き出してしまっている。
作者が描きたいのが推理小説ではなく、
鳥井と坂木を巡る人間ドラマなのだとしたらそれでもいいが、
それならそれで推理小説と名乗らないで欲しい。
そしたら最初から僕は読まないだろうから。
有栖川有栖さんやはやみねかおるさんが解説にて「鳥井が好きになれない」と書いているが、
僕も同感である。
(お二人はそこが異色作であるとプラス方向に評価している)
心に病を持つ人に対して寛容になれない自分を少々恥じはするけれど、
それを差し引いても、鳥井とは友達になりたくない。
同様に、鳥井に対して友情を超越した感情を抱いている坂木も、
ストレートに表現させてもらえば「気持ちが悪い」。
探偵もワトソンも好きになれない作品が面白いわけはない。
「想像力が足りねぇんだよ。自分のしたいことばっか考えて、他人がどうなるかなんて考えちゃいない。それが犯罪者の心理ってやつさ」
鳥井は好きじゃないけれど、このセリフには深く頷いてしまった。
僕は、人間が持つ力の中で最も偉大なものが想像力だと思う。
想像力があるからこそ、人類はここまで進歩することができたのだと信じている。
だから、せっかく人間に与えられた力を使わないことを悲しく思う。
誰にでもある想像力を使わないで、他人を傷つけるのはとても悲しいことだ。