亡き妻に謝罪したい。引退した不動産業者・方城兵馬の願いを叶えるため、長男の直嗣が連れてきたのは霊媒だった。
インチキを暴こうとする超常現象の研究者までが方城家を訪れ騒然とする中、密室状況下で兵馬が撲殺される。
霊媒は悪霊の仕業と主張、かくて行なわれた調伏のための降霊会で第二の惨劇が勃発する。
※ねたばらしを含む感想です。未読の方はご注意を。
倉知淳のレギュラーシリーズである猫丸先輩ものです。
猫丸の後輩、方城成一の実家で起きる連続殺人事件。
祖父・兵馬が離れで密室状態の部屋で撲殺される。
だが、家族はもちろん、その場に居合わせた霊媒師、霊媒のインチキを暴こうというサイ研究家の学生たちにまで完璧なアリバイが成立する。
事件は謎のまま、悪霊に取りつかれているという霊媒師の主張のもと、降霊会が開かれ、その席上で、今度は霊媒師が刺殺される。
この二つの惨劇に猫丸先輩が挑む…というストーリーなのですが、
この猫丸先輩、恐竜の骨の発掘に夢中になっていて、事件そのものにはほとんど絡んできません。
終盤にきてやっと重い腰を上げるという…。（恐竜の骨の発掘は大失敗に終わるのだが）
二つの殺人事件とも、メイントリックとしてはアリバイ崩しですね。
二つめは、全員が指を抑え合っていた、という変則的なアリバイですが。
まさか叙述ミステリとは思わなかったのでちょっとびっくりしました。
伏線の少なさは気になるところですが、一応納得はできたし、久しぶりにすっきりとした謎解きを読んだなあ、という印象。
ちょっと二つ目の事件の方は動機が強引な気もしましたけどね。
何も殺さなくても、いくらでも妨害する方法はあったでしょうに、と思います。
でも全体的にすっきりとまとまっていて、良い作品だと思います。
後味もそれほど悪くないし。