「空想オルガン」 初野晴 角川書店 ★★★☆ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

吹奏楽の“甲子園”普門館を目指すハルタとチカ。
ついに吹奏楽コンクール地区大会が始まった。だが、二人の前に難題がふりかかる。会場で出会った稀少犬の持ち主をめぐる暗号、ハルタの新居候補のアパートにまつわる幽霊の謎、県大会で遭遇したライバル女子校の秘密、そして不思議なオルガンリサイタル…。
容姿端麗、頭脳明晰のハルタと、天然少女チカが織りなす迷推理、そしてコンクールの行方は?
「退出ゲーム」「初恋ソムリエ」に続く“ハルチカ”シリーズ第三弾。青春×本格ミステリの決定版。


空想オルガン (角川文庫)



ミステリというよりはどちらかと言えば青春小説としての色合いが強いこの作品。


前作、前々作と続いて「もって回っためんどうくさい謎」(つまりはちっとも魅力的でない謎)と、


「全然すっきりしない解決」に消化不良気味になっていました。



これは吹奏楽部の面々の成長ぶりを楽しむ小説であって、


ミステリとして楽しむもんじゃないんだなーとか思ってね。



でも! 今作は違いました。


何と言っても「ヴァナキュラー・モダニズム」!


途中で幽霊の正体とアパートに隠された秘密がわかってしまいましたが、


それがわかったときのドキドキ感と言ったらなかったです。


お祖父さんが生きる希望が湧いてきたというのもわかりますよ。


こんな愉快で素敵ないたずらを思いついてしまったら……思わず笑顔になってしまうでしょうね。


プロローグの伏線も効果的で本当にきれいなミステリに仕上がっていると思います。


正直、僕の中では「斜め屋敷」を超えたトリックかもしらんね(笑)