御子柴礼司は被告に多額の報酬を要求する悪辣弁護士。
彼は十四歳の時、幼女バラバラ殺人を犯し少年院に収監されるが、名前を変え弁護士となった。
三億円の保険金殺人事件を担当する御子柴は、過去を強請屋のライターに知られる。
彼の死体を遺棄した御子柴には、鉄壁のアリバイがあった。驚愕の逆転法廷劇!
※ねたばらしアリの感想です。未読の方はご注意を。
裏表紙の梗概に、「死体を遺棄した御子柴には、鉄壁のアリバイがあった」と書かれていた。
実際、物語の冒頭で御子柴弁護士が死体を遺棄するシーンが描かれている。
僕は、「ほうほう鉄壁のアリバイね。どんなものだろうか」と楽しみにしながら読み進めた。
そしたら、ウチの奥さんが、
「鉄壁のアリバイがあるってことは、殺したのは別のヒトってことね」
「え?」
「だって。遺棄したとしか書いてないじゃない。そしたらアリバイがあって当たり前でしょ」
「あ。ああ……そうだね」
そうなんだよなあ。
僕はそういうことに全然気がつけないんだ。
アホみたいにたくさんミステリ読んでても、なんも意味ないっつーの。
……まあ、それはさておき。閑話休題。
敏腕だけど、金を稼ぐことに固執する弁護士。血も涙もない、冷酷で冷徹な弁護士。
それが御子柴なのだが、なぜか、ある国選の弁護を受けることになる。
障害を持つ息子を持った母親が、生命保険目当てに、重体の父親の生命維持装置を切ったという疑いをかけられたという事件。
父親は身体が不自由な息子に、自分の工場を継いでもらえるように、ロボットアームを導入するなど、フルオートメーション化をしていた。
億単位の生命保険が入れば、その借金を清算して、なお余る。
御子柴は、そこにカネの匂いを嗅ぎつけたのだろうか……。
そんな風に考えながら読み進めていると、第三章から御子柴が殺人事件で収監されていた少年院時代の話になる。
なぜ人を殺してはいけないかすら理解していなかった少年が、
そこでの出逢いで少しずつ自分のしでかしたことについて自覚的になっていく様子が、
とても丁寧に書かれている。
ちょっと冗長ではないかなとも思ったけれど、ここの描写がテキトーだと、オチに説得力がなくなる。
真犯人のどんでん返しはまあ……別にいいや。
ただ、御子柴のイメージが完全に180度ひっくり返るところが面白いと思った。
正直言うと、御子柴は最後まで絶対的な「悪」でいてほしかったような気もするけれど、
こういう「いいハナシ」的なオチは世間的にはウケるんだろうな。