目黒本町のマンションで殺害された小西のぞみの身辺を調べていくと、武蔵学院大学アメフト部「ボアーズ」との関連が浮上、更にはボアーズの仲間内でこの五年に複数の変死者が出ていると判明した。
これらは繋がっているのか。
松谷警部は白石巡査らと捜査に当たるが、のぞみの事件についてボアーズ関係者のアリバイはほぼ成立し、動機らしきものも見当たらない。
過去の事件は不可解な点を残しながらも既決事項となっている。
白石巡査は「動機は後回し」と地道に捜査を進め、ついに犯人がわかったと宣言。
松谷の自宅で清酒「浦霞」を傾けながら、白石の謎解きが始まる。
これ……2013年に新刊として出たんだよね?
僕が今、手にしているのも初版の文庫本なんだけど。
ずっと昔に書かれたものが長い年月を経て文庫化されたわけじゃない…んですよね?
なら、なぜこの年代?
いや。別に小説ですからね。舞台をいつに設定してもいいんですよ。
だってそんなこと言い出したら時代小説なんて存在しちゃいけなくなるわけですからね。
でも、文体とか表現とかキャラクターとかがあまりにも古臭くて、
びっくりするくらい違和感がなかった。
ユーモアミステリの風味を狙っているのか無意味に軽い会話も、無理やりアメフトの用語と絡めてくるあたりも、オヤジギャグにも似てとても寒い。
白石イアイ巡査の「動機は後回し」という発言があって、
なるほどこれは論理の積み重ねで解決にたどり着く本格ミステリなのだなと思うのだけれど、
物語は、どちらかと言えば警察小説らしく地味で地道な捜査で進行していく。
終盤までほぼ何も情報が増えないまま、捜査も何も進展はしない。
正直、解決編までたどり着くのに結構な忍耐力を必要とした。
キャラクターも没個性で無駄に人間も多いので、誰にも感情移入ができない。
(動機を無視したのは確かに正解だわ)
そもそも物語の中心になる白雪姫こと美鶴に何も魅力がないというのが致命的。
解決編では「現場でビールがこぼされていた本当の理由」をきっかけに、
バラバラに見えた推理が一つにまとまり、
事件の謎が解けていく様はいかにも本格ミステリの醍醐味があったけれど、
そこに至るまでの冗長さと退屈さ、地味さに負けてくたくたになっているアタマには、
面白さを感じる余裕はなかった。ゴメン、ダメだこれは。