かつて乙霧村で、戸川稔という男に一家五人が殺されるという凄惨な事件が起きた。
あれから22年……この事件を題材に「乙霧村の惨劇」という作品を書いた泉蓮が顧問を務める大学の文学サークルのメンバー6人がこの村を訪ねる。
事件当時と同じ豪雨の中、彼らは斧を持った大男に襲われる。
果たして彼は戸川のような殺人鬼なのか? 学生たちは助かるのか?
※事件の真相に触れている箇所があります。未読の方はご注意を。
大学の仲間たちの、ちょっと無謀で不謹慎とも言える、かつて凄惨な殺人があった現場の探訪旅行。
仕切り屋でちょっとみんなに疎ましがられているリーダー、
金持ちを鼻にかけるエリート面をした優男、
頭はよさそうだけれど、誰彼かまわずつっかかるひねくれものの女子、
空気が読めていないんだか何だかわかりづらい自己チュー美人、
みんなのクッション役に徹する控えめな男子、
そして主人公の女性。彼女はちょっと引いた視点で全体を観ている感じ。
そんな六人が廃屋を探検中に、かつて一家五人を惨殺した犯人の戸川稔と思われるようないでたちの大男に襲われる。
豪雨の中、逃げ回る六人と、それを追う大男。
まさにB級ホラー。このあたりは正直言ってたいして面白味はない。
もちろんそういうサスペンスが好きな人も多いと思うけれど、僕はあまり好きじゃない。
(岡嶋二人さんの「クリスマスイブ」を思い出した)
アメリカ人だったらこういうの好きなのかもしれないけどさあ。
で、第二部。
実は誰も死んでいませんでした、という拍子抜けする展開の後、
六人の中で一番控えめな男子が実は同じ大学の学生ではなかったということがわかり、
さらにこの旅行を企画したのも、大男(実は一家惨殺事件の生き残り)の大立ち回りも彼の思惑通りであったことがわかり、
じゃあそれはなんでなんだよ、というハナシになる。
結果、彼は戸川稔の血縁であったということが判明するのだけれど、
だから何なんだという感じしかしないんだよなあ。
一家惨殺事件の方はかなり凄惨でオープニングからかなりインパクトがあったけれど、
それだけに現代の事件はたいした謎があるわけでもなし、
真相が分かったところでさほど驚きもない。