雪が降りしきる年末、山荘村の清沢郷に降り立ったフランス人教師ナディア・モガールたち。
それぞれの思惑を胸に、山荘で新年を迎えようとするその時、幽霊山荘と呼ばれる場所で首なし死体が発見される。
幽霊騒動も勃発し、謎は深まるばかり。
のろわれた山荘の謎と、首なし殺人の真相をナディアたちは暴けるのか?
ナディア・モガール、若竹七海、ブッキー、刈谷正雄、法月綸太郎……、あの有名キャラクターが総登場。豪華執筆陣の本格リレー・ミステリ、いよいよ刊行。
「すごいメンバーだよね…」
「北村薫、笠井潔、岩崎正吾、若竹七海、法月綸太郎、巽昌章……って、東京創元社じゃなければ絶対集まらないでしょ」
「と言うより、戸川さんじゃなければ、かもね」
「ああ、そうだなあ」
「しかもこのリレーミステリのルールがまたスゴイ」
「名探偵かそれに準ずるキャラクターを持っていること、か」
「だから豪華作家陣の競演であると同時に、名探偵たちの競演でもあるんだよねえ」
「そうだなあ」
「……あれ、なんか反応が鈍いね?」
「だって、面白くねーんだもん」
「お? そんなこと言っていいの? これだけの作家さんたちだよ?」
「そりゃ一人ひとりは好きだよ。最高の面子だろうさ。
でも、どんな作家さんが集まったって、リレー小説が面白かったためしなんてないんだもんな」
「本作もまた例外ではないと?」
「これだけの作家さんだからな、もしかしたら……っていう期待感はあったよ。
それだけに、残念な気持ちでいっぱいだな。
100メートルをさ、一人で走るのと、4人でバトンリレーして走るの、どっちが速いかってハナシだよ。
面白くなるわけないんだよ、リレー小説なんて。ましてや論理が重視される本格ミステリでそれをやろうなんていうのは、無茶以外の何ものでもないって、今回本当によく分かった」
「確かに、ちぐはぐな感じは否めないと思うけど」
「ちぐはぐって言うかさ、迷走してるよな。最初はよかったんだよ、トリックそのものはしょぼくても一応、ミステリの体を成していたから。
三人目くらいからだんだん話がこんがらがってきて、伏線もへったくれもなく、ただただ仮説が提示されるだけになってきて、スゲー難しいハナシになってきたなあって思ったけど、よくよく考えてみれば死体が転がっているってだけで、実はたいしたハナシじゃなくて。
オチまでいけば、すっきりするのかと思って頑張って読んだけど、やっぱりそんなことなくて」
「……まあ、こういうのはお祭りみたいなもんだから。
お祭りの屋台に、ミシュラン級の味を求めてもいかんでしょ。
雰囲気とか、そういうのを楽しむものと割り切ってしまえば、楽屋ネタも楽しめるじゃん?」
「まあ、北村薫さんの『私』の名前をどうすんのかなって。みんなそれぞれに苦労しているのが見えて面白かったりしたけれどね」
「まあ、そういう部分を楽しむしかない、ってことで」
「ま、リレー小説ってのはお祭りだから、ってのが結論かな」