警察学校での成績が同点で一位だった、戸柏耕史と陶山史香。
彼らは卒配後も手柄を争い出世をしていくが―。
なぜ二人は張り合い続けるのか?
異色の連作短篇警察小説。
異色の連作短編集。
警察小説なのだけど……。
ここまで時間が経過する連作短編集は読んだことがないぞ。
主人公は二人、いや三人か。
それぞれ別々の派出所に勤務する巡査、耕史と史香。
二人は警察学校の同期で、首席の座を同点で分け合ったライバル。
互いに成績を競ってはいるが、いがみ合っているという印象はなく、良きライバルという感じ。
いたずらっ子の妹とお兄ちゃんみたいな印象すら、ある。
そんな二人と、ある事件をきっかけに知り合った少女、薫。
この三人の成長物語ではあるのだけれど、時間が進み過ぎ。
最終話では二人は「おじいちゃん」「おばあちゃん」と言われるような年齢にまでなる。
子供だった薫も「おばちゃん」だ。
ここまで駆け足で時計の針を進める必要があったかなー。
たった250ページで人の一生を描ききるとは。
短編の名手、長岡弘樹ならでは、という感じもするけれど、
もう少し、ゆっくりと二人の関係を掘り下げていってもよかったかなーという気はする。
内容については、
長岡節が十全に発揮された独特の世界という感じがする。
警察小説と言っても、本当に独特。
事件がありました、捜査しました、解決しました、という単純な展開ではなく、
あっちとこっちがひっついて、こうなるのか、みたいな。
うーん、わかりづらいな。
長岡弘樹はぜんぶを書かないんだよな。
本当に必要最低限のことだけを書いて、全然説明をしない。
だから、抽象画というほどではないにしても、ストレートに書くということはない。
だから、真相が分かったところで、「えっ!そうだったの!」というわかりやすいカタルシスはない。
どちらかと言うと、じんわりとくる感じ。
なんだか煮え切らない感じと、すっきりしない感じがちょっとクセになるのだが、
エピローグに関してはもうちょっとシンプルに書いてもよかったのでは?
長い長い年月を描いた二人のライバル物語の根幹を揺るがすような真実が明らかになるのだから、
そこは、溜めて溜めてドン、でよかったように思える。
「教場」以降、長岡ワールドが深みを増しているように思えるのだけれど、
あんまりやり過ぎると、僕みたいな単純な読者は着いていけなくなるぞ。
……というのは冗談にしても、一般ウケはしなくなるかもなあ。