深く刺さった、小さな棘のような悪意が、平和なオフィスに八つの事件をひきおこす。
社会人一年生の大介にはさっぱり犯人の見当がつかないのだが…「歩いたあとには、1ミクロンの塵も落ちていない」という掃除の天才、そして、とても掃除スタッフには見えないほどお洒落な女の子、キリコが鋭い洞察力で真相をぴたりと当てる。
主人公はオペレータールームに配属された梶本大介。
女性たちに囲まれた大介の周囲で巻き起こる奇妙な事件の数々。
書類紛失、保険外交員墜死、マルチ商法勧誘社員の台頭、派遣女性社員突然の昏倒、ロッカールームの泥棒、切り裂かれた部長のぬいぐるみ、黒い液体で汚されたトイレ。
それらの謎に挑む探偵役は、女性清掃作業員のキリコ。
でも何とコギャルなんだね、これが。
とは言え、キリコちゃんは見た目がコギャルなだけで、その中身は知的でクール。
言葉遣いにも不快感はないです。
コギャル嫌いの僕だけど、キリコちゃんならまったく問題なしですね。
短編にありがちな、伏線もない強引な解決編はまあ目をつぶるとしても、謎自体が大して魅力的じゃないところは今一つかなあ。
その中で近藤節がチラリと見えて気に入った作品は「シンデレラ」。
キリコに恋をしたが故に、トイレをわざと汚したり、他社の清掃会社を上層部に推薦したりと、なんとか清掃業をやめさせようとする男の話。
その男曰く、「きみには這いつくばって人のゴミを拾うなんてことをして欲しくなかったんだ。きみはそんなことにはふさわしくない人だ」
大介はキリコがこの仕事が好きで誇りも持っていることを知っていたからこそにこう思う。
この男は、自分好きな女の子にはお姫様でいて欲しいんだ。
彼女が理想のお姫様でいる限り、守って優しくしてあげるのだろう。
女の子も男と同じように考えて、頑張って生きているということに気づかないのだろう。
うーん、近藤節ですね。
ここから最後の短編のキリコと大介の結婚話に繋がっていくわけです。
キリコの本質、キリコが何を求め何になりたいのかちゃんとわかっていた大介の勝ちです。