死んだ妻に会いたくて、霊現象探究所を構える真備。
そのもとに訪れる、傷ついた心を持った人たち。
友人の両親を殺した犯人を見つけたい少年、拾った仔猫を殺した少女、自分のせいで孫を亡くした老人……。
心が騒ぐ五篇を収録。真備シリーズ初の短編集。
「流れ星のつくり方」
短編集の一本目にこのレベルを持ってくるのはズルイ。
否応なしに期待感が高まります。
それほどこの短編のラストは印象的。
このラストが良いのはオチの優劣そのものだけでなく、そこまでの持っていき方が巧いからでしょう。
すーっと滑らかに物語を運んでいって、すとんと落とす。
ミステリの肝はオチではなく伏線にあり。僕の持論です。
「モルグ街の奇術」
ミステリの肝はオチではなく伏線にあり、と前述しましたが、奇術もまたオチの段階ではすでにすべての準備は整っているわけです。
真備も作中でそう述べています。
奇術師ははたして本当に自分の手を奇術で消し去ったのか?
レジや二人の財布の中かに百円玉が消えていたのは偶然か?
その答えは奇術師だけが知っています。
「オディ&デコ」
物語のオチは読めていました。
というより、こういうオチじゃなかったら許さん(笑)
でも、鬼の面はわからなかったなあ。それはさすがに…ヒントが少なすぎるもの。
「箱の中の隼」
んんー。これはちょっと今ひとつかなあ。
彼女がコーヒーを飲めないと言いながらおいしそうにカップに口をつけた理由、彼女が急に苦しそうに咳きこんだ理由は面白かった。
このアイディアはうまく使えば、別の作品になりそうだなあ。
一方、宗教施設でのドタバタはちょっと…。
真備の推理も、これは推理ではなく単なる知識だ。
確かに推理は事実と知識を結びつけることかもしれないけれど、ただそれだけではミステリにはなり得ない。
もうひと工夫ほしかったなあ。
「花と水」
嫌だなあ、こういう話。
どういうオチをつけようが、孫娘が死んでいる時点で、もう完全なるハッピーエンドはありえないわけですよ。
壊れたものはもう二度と元に戻らない。
ハッピーエンドがないことを最初から知っていて読む物語は心に負担になるよなあ。