今日は年に一度のイベント、書店大賞授賞式の日。
成風堂に勤める杏子と多絵は、初めての授賞式参加とあって、華やいだ気分でいっぱいだ。
ところが朝の業務を終えて出かけようという矢先に、福岡の書店員・花乃が「書店の謎を解く名探偵」に会いに成風堂を訪れる。
書店大賞事務局に届いた不審なFAXの謎を名探偵に解いてほしいというのだ。
一方、明林書房の新人営業マン・智紀も、全国から書店員が集まる今日を有意義に過ごすべく、準備万端調えていた。
そこへ、他社の営業マン・真柴から、今すぐ来いと呼び出しを受ける。
書店大賞事務局長の竹ノ内が、今日のイベントに関わる重大問題に頭を抱えているらしい…。
“成風堂書店事件メモ”と“出版社営業・井辻智紀の業務日誌”、両シリーズのキャラクターが勢ぞろい。
書店員の最も忙しい一日を描く、本格書店ミステリ。
本屋大賞はもうその役目を終えたのかもしれないなあ…と思うこともある。
なぜか?
それは、ここ数年の対象受賞作を見てみれば明白だろう。
「村上海賊の娘」
「海賊と呼ばれた男」
「舟を編む」
「謎解きはディナーのあとで」
「天地明察」
……なあ、これが本当に「書店員がいちばん売りたい本」でいいのか?
別に、他人が良いと思って選んだ本にケチをつけたいわけじゃない。
組織票で順位が決まる今のシステムなど、
いろいろと文句をつけたいことはあるけれど、
「本屋大賞」というムーブメントを作り出した人たちには素直に敬意を表したい。
気持ちだけではなく、実際にアクションを起こした人たちは本当に素晴らしいと思う。
こんなブログで文句だけ垂れ流している書店員なんかより、はるかに立派だ。
それでも、「本屋大賞」がつまらないという気持ちに変わりはない。
情報番組で紹介されたり、映画やドラマになったりで、
すでに有名になっていてある程度売れている作品しか審査の俎上に上がらないのは、
書店員が自分の目で本を選ぶことができなくなっているからではないかと、
そんなふうに思ってしまう。
「売りたい本」ではなく「売れている本」を選ぶのが「本屋大賞」なのだとしたら、
もう本屋大賞が出来ることは何もないような気がする。
そんなことをつらつらと考えながら読んでいた。
いろいろ考えさせられることは多かったけれど、物語そのものは退屈で詰まらなかった。
というより、むしろ何が起きているのかよくわからない。
何が謎なのかも、誰が何をしているのかもよくわらかなくて、
ただ何となくごちゃごちゃっとしたまま話が進んでいき、ストーリーにまったく起伏がない。
書店限定の名探偵と、トラブル巻き込まれ型の版元営業さんの「夢の共演」は楽しかったけれど、
大崎梢さんはやっぱり長編を書くのが下手だなあ。
この人は本当に短編のヒトだとつくづく思った。