「流れ星と遊んだころ」 連城三紀彦 双葉社 ★★ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

傲岸不遜な大スター「花ジン」こと花村陣四郎に隷属させられているマネージャーの北上梁一は、ある夜、一組の男女と出会う。

秋場という男の放つ危険な魅力に惚れこんだ梁一は、彼をスターにすることを決意。

その恋人である鈴子も巻きこみ、花ジンから大作映画の主役を奪い取ろうと画策する。

芸能界の裏側を掻い潜りながら着実に階段を上る三人だが、やがてそれぞれの思惑と愛憎が絡みあい、事態は思わぬ展開をみせる。

虚々実々の駆け引きと二重三重の嘘、二転三転のどんでん返しが、めくるめく騙しの迷宮に読者を誘う技巧派ミステリの傑作。


流れ星と遊んだころ (双葉文庫)



騙し騙され、どいつもこいつも信用できず、


何が本当で何が嘘かもわからない。


二転三転どころか、四転五転六転七転……と、


ごろんごろんひっくり返る。


嘘をついていたはずの人物が、すっかり罠にかかっていたり、


さらにその罠を利用されて逆に騙されたり、


そうかと思えば、また別の真実がでてきたり、


それも真実かどうかもよくわからなかったり。



文体そのものも一人称と三人称が何度も入れ替わり、


物語はめまぐるしいくらいの反転を見せる。




これを面白いと思える人は連城作品を楽しめるんだろうなあ……。


僕はダメだ。


連城三紀彦は……僕の性に合わないんだなあ。


と、つくづく思う。



世間の評価と僕の評価がこれほど解離している作家は他にはいない。



一人称と三人称の入れ替わりだって、どう考えたってそこに叙述トリックが仕掛けれられていることが明らかだし、


(そもそも連城作品はその警戒をして読む)


舞台が芸能界であることを考えれば、利用できるそうな叙述トリックの想像はつく。


あまり意外性はなかった。



いっそ、トリックなんて一切排除して、


梁一と秋場と鈴子の、奇妙な三角関係を描いたラブストーリーに仕立てたほうが、


面白かったのではないとすら。



まあ、その場合、僕がこの本を読むことはないだろうけれど(笑)