「聖域」 大倉崇裕 東京創元社 ★★★ | 水底の本棚

水底の本棚

しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

安西おまえはなぜ死んだ?

マッキンリーを極めたほどの男が、なぜ難易度の低い塩尻岳で滑落したのか。

事故か、自殺か、それとも―。

三年前のある事故以来、山に背を向けて生きていた草庭は、好敵手であり親友でもあった安西の死の謎を解き明かすため、再び山と向き合うことを決意する。

すべてが山へ繋がる、悲劇の鎖を断ち切るために!

話題を呼んだ著者渾身の山岳ミステリ。



聖域 (創元推理文庫)




山で死んだ親友。


主人公はその死の理由を探ろうとするわけだが……



無理じゃない?


って思った。



街中で人が死んでいるのとわけが違う。


山は死と隣り合わせ。(いや、実際よくは知らんが)


そこで人が死ぬことが、そう珍しくない状況で、それが事故なのか自殺なのか他殺なのかを見極めるのは、おそらくひじょうに困難なハナシだ。


他殺だということがもし判明したとしても、証拠がない。


現場保存もままならず、そもそも死体も上がらない雪山でどうやって他殺の証拠を手に入れるのか。



山岳ミステリというジャンル(があるのかどうかもわからんけども)は初めて読むが、


正直、山とミステリって相性が悪すぎる気がする。




とは言っても、作者の山への愛情が溢れていて、


それだけで十分、読み応えがある。



実際、それで山に興味が出るかっつったら、そうでもないんだけども




登場人物がごちゃごちゃしていてうざったい感じはあるし、


その書き分けができていないから、


「誰だっけ、これ?」ってことがしばしばあった。



ストーリーもシンプルで、怪しい人物がそのまま怪しい。


印象としては、二時間サスペンスに近い。



山とミステリは相性があまり良くないようだが、山とサスペンスは、そう相性が悪くなさそうだ。



ありがちで平凡かもしれないけれど、


山を愛し、山にとりつかれた人たちのドラマとして楽しむことはできる。