二週続けての大雪。
本屋に限らず、小売業にとって悪天候は最大の敵。
一生懸命売場をつくっても、どんなに売れる本を仕入れても、
お客さまがいらっしゃらなければ、
ぜんぶ、無駄。
中学生のとき、担任が言った、
「天気を気にしながら、季節を気にしながら、する仕事に就きたかったから教師になった」
という言葉を「ちょっといいな」と思っていた。
大学を卒業してから10年以上、天気も季節も関係ないシステムエンジニアという仕事をしていたから、
なおさらこの言葉を「いいな」と思っていた。
でも今は思う。
ゴメン、先生。
僕は、天気に左右されない仕事がいいです。
それでも、来てくださるお客さまのためにお店は開けなければいけないわけで、
電車の遅延、運転見合わせ、間引きでお店にたどり着けない従業員続出の中、
がんばって来てくれた人たち、本当にありがとうね。
ちゃんとお店が開店できているか全国のお店に電話をしまくっていましたが、
電話をしている僕は、家にいた。
(だって、電車が動いてねーんだもんよ。一応駅まで行ったんだぜ)
で、ウチでぼんやりしながらなんとなく本を手に取る。
お店のことが気になるから、こういうときはあまりのめり込まずに読めるノンフィクションとかルポタージュなんかがいい。
で、これ。
男たちはなぜ、だまされたのか。
肉体と結婚をちらつかせて男たちから1億円以上もだまし取り、3人の男を練炭で殺害したとして死刑判決を受けた木嶋佳苗被告。
100日に及んだ裁判では、彼女のファッションまでもが話題となり、自身のセックスについて赤裸々に語ったことで、日本中が騒然となった。
「稀代の婚活詐欺師」「平成の毒婦」と呼ばれた木嶋被告とは、どんな人物なのか。
決して美人とはいえない容姿で、何人もの男を手玉に取れた理由とは。
裁判の傍聴に加え、故郷・北海道別海町や事件関係者への徹底した取材を通して
木嶋被告の内面に迫った渾身の一冊。
女性目線のルポタージュがとても新鮮だ。
少なくとも、報道で目にしていた木嶋被告とはまったく違う木嶋佳苗像が本書の中にはある。
男は誰でも、木嶋被告の姿を目にしたら、
「なんでこんな女に大金を貢ぐんだよ? あり得ないだろ?」
と思う。
同時に、俺だったら絶対騙されないけどな、とも思う。
でも実際に騙される男はいた。
もし男女が逆だったらどうだろうか。
若くもなく、見た目も冴えない男が、婚活サイトで出会ったその日に「学費を援助してください」と言ったとき、振込をしてくれる女性がいるだろうか。
本文中でこんなことが書かれている。
インターネットで知り合った男性と会って間もなく、ホテルに行く女性を誰が「純粋だ」と言うだろうか。
そんな女性は「騙されても仕方がない」と言われないだろうか。
言われるだろうね。絶対。
でも、それが男性だというだけで、「佳苗との結婚生活を思い描き、ただ幸せになりたかっただけの純粋な被害者」になってしまう。
だからと言って、彼らが殺されなければいけないほど悪いことをしたわけではない。
性別に関わらずアンモラルだからと言って、それが殺される理由には絶対にならない。
どんな目線で語ったとしても(判決が正しいのであれば)木嶋被告は許されることはない。
でも。
少なくとも本書を読むと、報道されていたのとは少し違った側面が見えてくるのは事実。
それは面白いと思った。