ソチ五輪、日本はまだメダルがありませんね……。
でも期待できる種目も残っているので。
これからこれから!
オリンピックは参加することに意義が………。
あるわけはない!
スポーツなんて結果残してナンボじゃい。
とまでは言わないし、スポーツは勝ち負けにかかわらず楽しいものだと知ってはいるけれど、でもどうせなら勝ったほうがより楽しいのも事実。
そもそも、クーベルタンは「参加することに意義があって、勝ち負けはどうでもいい」とは言っていないのですよね。
彼が言ったのは、「参加し、勝つために正しく努力することに意義があり、結果に意義があるわけではない」という意味だと思うんですよね。
で。
冬季五輪と言えば、花形はやっぱりスキー競技。(個人的には)
そこで紹介するのはこの一冊。
これこそまさに、「勝つためには手段を選ばない」という見本のような。
未読の方はぜひ読んでみてください。
※感想はねたばらしありです。
「鳥人」として名を馳せ、日本ジャンプ界を担うエース、楡井明が毒殺された。
捜査が難航する中、警察に届いた一通の手紙。それは楡井のコーチである峰岸が犯人であることを告げる「密告状」だった。
警察に逮捕された峰岸は、留置場の中で推理する。「計画は完璧だった。警察は完全に欺いたつもりだったのに。俺を密告したのは誰なんだ?」
警察の捜査と峰岸の推理が進むうちに、恐るべき「計画」の存在が浮かび上がる…。
精緻極まる伏線、二転三転する物語。
日本ジャンプ界期待のエース、楡井明が毒殺された。
犯人はほどなく、コーチである峰岸と判明する。
ところが、峰岸の犯行はすべて楡井に見抜かれており、実は犯人は他にいたのだというどんでん返しが待っているのだが…はっきり言ってそれはオマケみたいなもの。
この小説は純然たるホワイダニット。
どうして峰岸は手中の珠である楡井を殺害しなければならなかったのか?
それがこの小説の最大のポイントだ。
この「鳥人計画」で描かれているスポーツ界の暗部は、「理想と現実のギャップ」だと僕は解釈した。
作中で自分の息子を半ばジャンプのサイボーグのように扱い、楡井のコピーに仕立てようとしていた杉江がこんな風に言う。
「(前略)今はもう誰も、参加することに意義があるなどといってはくれません。国家予算を使って行く以上は、どんなことをしてもメダルをもぎとってこい、そのためにはドーピングでも何でもやってみろ、ただしバレるな―これが世間の本音なんですよ」
ある意味でこれは真実かもしれない。
スポーツの世界は結果がすべてだとまで極端なことは言わないが、少なくとも過程よりも結果が重要視されることだけは間違いない。
そんな世界において、人間的でまっとうな方法で強くなりたいと理想を求め続けるジャンパーと、方法なんて何でもいいからと現実だけを見詰めるジャンパーが存在すれば、そこには必ず軋轢が生まれる。
この犯罪もそういう性格を持ったものだったと僕は感じた。
楡井という理想に向かってまっとうな方法で努力し、しかし届かなかった峰岸と、極めてまっとうではない方法で、易々と楡井の力を手に入れた杉江親子。
楡井が殺されるのはまったく理不尽な話だが…それでも峰岸の気持ちは僕にはわかる気がする。