「Story Seller annex」 新潮社ストーリーセラー編集部・編 新潮社 ★★★ | 水底の本棚

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しがない書店員である僕が、
日々読んだ本の紹介や感想を徒然なるままに書いていきます。

書店のオシゴトの様子なんかも時々は。
本好きの方、ぜひのぞいてみてください。

大好評アンソロジー「Story Seller」の姉妹編をお届けします。今回も、6名の超人気作家が豪華競演。

オール読みきりで、読み応え抜群の作品を詰め込みました。

あっと驚かされるミステリ、くすりと笑える話から、思わず涙がこぼれる恋愛小説まで。物語の力にどっぷり惹き込まれる幸せな読書体験をどうぞ。

お気に入りが見つかったら次の本を探せる、作家別著作リストも完備しました。



Story Seller annex (新潮文庫)




このアンソロジーのシリーズは基本的にハズレがないのですよね。


作家さんも好きな人が多いし安心して読めます。


「読み応えは長編並、読みやすさは短編並」の看板に偽りなし。

はじめて読む人も安心。

でも、メジャーな作家さんが多いので、あまりはじめてってことはないと思うんですけどね。


「R-18 二次元規制についてとある出版関係者たちの雑談」(有川浩)


……いや、面白いんですけどね。

僕も書店員として、二次元規制のアホらしさには辟易としています。

規制しなければいけないものも、もちろんある。でも誰がそれを選ぶの? そんな神のごとき存在がいるとは思えないんですけどね。


まあ、それはそれとして。

有川さんの主張にはおおいに同意するとしても……これは小説じゃないよね。

二次元規制反対を訴えたいのならば、それをテーマにして小説を書くべきじゃないかな?

少なくともこのアンソロジーは「ストーリーセラー」なんだから。


「万灯」(米澤穂信)


バングラディッシュでガス資源開発をするために単身、未開の村に乗り込んで村長と交渉をする男。

村長は決して首を縦に振らないが、村人たちは村が経済的に潤うことを望んでいる。そんな村人たちが男に告げた交換条件は……村長を殺害すること。

ガス資源開発の拠点基地をつくらせてもらうことを条件に、人殺しに手を染めた男が受ける罰とは…?


どちらに転んでも、おそらく迎えるであろうバッドエンディング。

巧いが……なんだか物悲しい。


「約束」(湊かなえ)


湊かなえさんらしい、ラブストーリー。

愛にはいろんなカタチがあるんだろうけれど……歪んだ愛は成就することはないし、すべきでもないと思う。



そのほかの収録作品は「暗がりの子供」(道尾秀介)、「トゥラーダ」(近藤史恵)、「ジョン・ファウルズを探して」(恩田陸)。近藤史恵さんは既読でした。